「ジャラーサンダ王の殺害」
(18)ジャラーサンダ王の殺害
☆主要登場人物
◎ユディシュティラ・・・パーンドゥ兄弟の長男。ダルマ神の子。
◎クリシュナ・・・至高者の化身。パーンドゥ兄弟のいとこ。
◎ビーマ・・・パーンドゥ兄弟の次男。風神ヴァーユの子。非常に強い。
◎アルジュナ・・・パーンドゥ兄弟の三男。クンティー妃とインドラ神の子。弓、武術の達人。
◎ジャラーサンダ・・・マガダ国の王。非常に強い。多くの領主を牢獄に捕らえ、殺そうとしている。
マガダ国のジャラーサンダ王は、不思議な出生をしていました。
昔、ブリハドラタという英雄が、マガダ国で大いに精力を奮っていました。
彼はカーシー国の藩王の双子の姫と結婚し、二人を全く公平に扱うということを誓っていました。
ブリハドラタは長い間、子宝に恵まれませんでした。彼は年をとると、自分の領地を部下たちに譲り、二人の妻とともに森に隠退して苦行生活を始めました。
しかしブリハドラタは、子供が欲しいという強い望みをあきらめきれず、カウシカという聖者のところに相談に行きました。カウシカは、マンゴーの実を一つ、ブリハドラタに与えて言いました。
「それを食べれば、子宝に恵まれるであろう。」
ブリハドラタは喜んで妻たちのところにもどると、「二人を平等に扱う」という誓いのもとに、マンゴーの実を二つに分けて、二人の妻に与えました。
するとまもなく、二人の妻は妊娠しました。しかししばらくして生まれた赤ん坊たちは、化け物のような姿をしていました。それは、それぞれが人間の右半身、左半身しかない姿で生まれてきたのです。
しかし後にこの半分ずつの赤ん坊は、くっついて、一人の完全な赤ん坊となりました。これがジャラーサンダだったのでした。
さて、ジャラーサンダを打ち倒すという決意が固まったとき、クリシュナは言いました。
「軍隊同士で戦うのではなく、ジャラーサンダを挑発して一対一の戦いに誘い込み、殺してしまうのがよいだろう。」
当時のおきてによると、武士は、挑戦を受けたときには必ず受けなければなりませんでした。クリシュナ、ビーマ、アルジュナの三人はジャラーサンダのところへ行き、挑戦を表明し、三人のうちの誰かを選べ、とジャラーサンダに言いました。ジャラーサンダはこう答えました。
「クリシュナは臆病者だし、アルジュナは青二才に過ぎぬ。だがビーマは怪力の持ち主と聞いているので、俺はビーマと戦いたい。」
こうしてジャラーサンダとビーマの一騎打ちが決定しました。ビーマはそのとき素手だったので、ジャラーサンダも武士道精神を発揮して、素手で戦うということを了承しました。
こうして始まったジャラーサンダとビーマの戦いは、ほとんど互角でした。二人は飲まず食わずで、一瞬も休むことなく、13日間、ぶっ続けで戦い続けました。
14日目に入り、ジャラーサンダは初めて疲労の色を示しました。その隙を見逃さず、ビーマはジャラーサンダの体を持ち上げると、百回も振り回した後に、地面にたたきつけました。そして両足をつかんで、ジャラーサンダの身体を真っ二つに引き裂いてしまいました。
ビーマは勝利の雄たけびをあげましたが、なんと、二つに引き裂かれたジャラーサンダの肉体は、すぐに再び一つに合体して復活し、ビーマに襲いかかってきたのです。
この光景にビーマは度肝を抜かれましたが、クリシュナのアドヴァイスを受け、ビーマは再びジャラーサンダの体を二つに引き裂くと、それぞれを全く反対の方向に投げました。こうしてジャラーサンダは再び合体することができず、息絶えたのでした。
こうしてジャラーサンダは死に、囚われの身となっていた86人の領主たちは解放されました。
そしてユディシュティラが『皇帝』になるためのラージャスーヤの儀式が執り行なわれることになったのでした。
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