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「アドブターナンダ」(5)

 ラーマクリシュナが死んで後、彼の若い弟子たちの多くは、俗世を捨て、出家修行者となりました。ラトゥもまた、正式に出家の誓いを立てたのでした。
 このとき、彼らのリーダー的存在だったナレーンドラ(後のヴィヴェーカーナンダ)は、ラトゥに「アドブターナンダ」という出家者名を与えました。これは、「すばらしい、驚くべき歓喜」というような意味です。
 前述のように、ナレーンドラのように優秀な学生も多かったラーマクリシュナの弟子たちの中で、ラトゥは、ラーマクリシュナ以上に全くの無学の少年でした。しかしこの無学の少年が、どんな学者もかなわないような多くの智慧を語る聖者となったのです。よってラトゥは、「ラーマクリシュナが見せた最大の奇跡」とも言われていました。そこでナレーンドラは、その奇跡、そしてラトゥの驚くほどの純粋性や智慧に敬意を表して、「アドブターナンダ(すばらしい、驚くべき歓喜)」という名を与えたのでした。

 ラーマクリシュナが亡くなって間もないころ、出家した弟子たちは「バラナゴル僧院」と呼ばれたボロ屋に住み、修行に励んでいました。
 
 このころのバラナゴル僧院の風景について、後にアドブターナンダ自身が、次のように語っています。

「そのころ、私たちは互いに心から愛し合っていたので、たまに誰かが誰かに対して怒っても、長続きはしませんでした。いつも、私たちの会話の話題は、師の卓越した愛のことになりました。
 誰かが、『彼は私を一番愛しておられた』と言うと、別の者がすぐに反論して言うのです、『いや、彼は私を一番愛しておられた。』
 ある日、そのような議論の最中に、私は彼らに言いました、『師は、財産を一切お残しにならなかったのに、それでも君たちの口論は果てしがないようだ。もし、彼が少しでも財産を残しておられたなら、君たちは訴訟を起こしていたかどうか、知れたものではない。』私の言葉に一同どっと笑いました。

 またあるとき、兄弟弟子たちの間で、白熱した議論がありました。ある在家の信者の心無い言葉を聞いて、ブラザー・シャシは非常に心を乱され、厳しい調子で言いました、『あんな信者の金なんか、棒の先でも触るわけにはいかない! のろわれている!』ブラザー・ロレン(ナレーンドラ)は、ブラザー・シャシが怒るのを見ると、いつも面白がりました。
 彼は、ブラザー・シャシに言いました、『よしわかった、では、君の師の召し上がりものは君が乞いに行け。』
 ブラザー・シャシは答えました、『いいとも、そして私は君の金にもびた一文触るものか! 私の師に差し上げるために、私は乞食をする。』
 なおも微笑みながら、ロレンは言いました、『では、乞食で得たルチ(高価な揚げパン)を彼に捧げるのだろうね。』
 ひるまず、シャシは答えました、『そうだ、私は彼にルチを捧げよう。それから、おさがりを君にやるから、後でがつがつと食いたまえ。』
 するとロレンは怒ったふりをしました。『いや、われわれに食べ物がないときに、ルチなどを師にささげさせてなるものか! そんな師は放り出してしまうべきだ。君がしないなら、私が自分で放り出そう!』
 こう言うとロレンは、はじかれたように立って祭壇に向かっていきました。シャシは英語で何か言いながら彼を追いました。
 起きたことを見て、私は間に入ろうとしました。私はロレンに言いました、『兄弟、どうしてあなたは師にルチをお供えしたいというシャシの望みに反対するのですか。彼には彼が好むようにさせ、あなたはあなたが好きなようになさい。』
 ロレンは言い返しました、『黙れ、ばかもの!』
 激しい反撃が私の口をついて出そうになりました。そのとき、ブラザー・ロレンがおなかを抱えて笑い、シャシも笑い出しました。数分後、私たちは一緒に座って、師の礼拝の準備について話し合っていました。」

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