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「さいころ賭博の策略」

(20)さいころ賭博の策略

☆主要登場人物

◎ユディシュティラ・・・パーンドゥ兄弟の長男。ダルマ神の子。インドラプラスタの王。
◎ドゥルヨーダナ・・・クル兄弟の長男。パーンドゥ兄弟に強い憎しみを抱く。
◎シャクニ・・・ドゥルヨーダナの叔父。
◎ドリタラーシュトラ・・・クル兄弟の父。パーンドゥ兄弟の叔父。生まれつき盲目の王。善人だが優柔不断で、息子に振り回される。
◎ヴィドラ・・・ドリタラーシュトラ王の主席顧問。マハートマ(偉大なる魂)といわれ、人々から尊敬されていた。

※クル兄弟・・・盲目の王ドリタラーシュトラの百人の息子たち。
※パーンドゥ兄弟・・・ドリタラーシュトラの弟である故パーンドゥ王の五人の息子たち。実は全員、マントラの力によって授かった神の子。

 ドゥルヨーダナとシャクラは、ドリタラーシュトラ王のもとへ行きました。まずドゥルヨーダナが、ユディシュティラの繁栄に対する嫉妬で悲しみに沈んでいることを打ち明けると、ドリタラーシュトラはこのように諭しました。

「かわいい息子よ、そなたは、世に名高き一族の栄誉と偉大さを受け継ぐべき王子ではないか。
 パーンドゥ兄弟に対する憎しみの心など抱くではない。身内同士の憎しみ合いは、ことに彼らが潔白である場合はなおさら、悲しみや死を必然的にもたらしてしまうものじゃ。
 真正直なユディシュティラをなぜそなたがそんなに憎むのか。彼の繁栄は、すなわち身内であるわれわれの繁栄ということにもなるのではないかな。
 ユディシュティラはそなたに対して、何のねたみも憎しみも持っておらぬではないか。そなたは彼と比べて、家柄も、武人としての資質も、なんら遜色がないのに、何ゆえに身内である彼に対してねたまなければならぬのじゃ。彼をねたむのはもうやめることじゃ。」

 ドリタラーシュトラがこのように諭そうとしても、ドゥルヨーダナは全く聞く耳を持たず、政治の格言を引用したりして、ユディシュティラに対する自分の嫌悪や嫉妬を正当化しようとしました。

 機を見て、シャクラが口を挟み、さいころ遊びにユディシュティラを誘い込んで彼らを破滅させるという計画を、ドリタラーシュトラ王に話しました。ドリタラーシュトラは答えました。

「そなたの思いつきは、どうもわしには正しいようには思えぬ。ひとつヴィドラにそれについて相談してみよう。彼ならわれわれに正しい助言を与えてくれるだろう。」

 しかしドゥルヨーダナは、それをさえぎって言いました。

「ヴィドラは私たちに、道徳的な陳腐な意見を述べるだけで、そんなものは何の役にも立ちません。それにヴィドラは私を好いておらず、パーンドゥ兄弟のほうをひいきにしています。父上もそのことはご存知でしょう。」

 ドリタラーシュトラは、
「パーンドゥ兄弟は強い。彼らと敵対するのは賢明なやり方だとはわしは思わぬ。さいころ遊びによる策略も、反目を招き、よくない結果を招くじゃろう。そんな策略はせぬほうがよい。」
と言ってこの計画に反対しましたが、ドゥルヨーダナはそれでもしつこく言い続けました。そこでドリタラーシュトラはついに折れ、こう言いました。

「息子よ、わしはもう年をとりすぎた。そなたの好きなようにするがいい。だがそなたのとろうとしている方法は、わしの気に入らぬ。そなたは後できっと後悔することになるぞ。ああ、これも運命のなせる業か。」

 議論に疲れ、息子を説得して思いとどまらせることもあきらめたドリタラーシュトラは、心ならずも彼らの計画に同意し、召使に命じて賭博の準備をさせました。

 しかしやはりヴィドラには相談しておいたほうがよいとも思い、ドゥルヨーダナに気づかれぬようにこっそりとヴィドラに相談しました。話を聞いて、ヴィドラはこう言いました。
「ああ、王よ。これは消すことのできぬ憎しみの炎を燃え上がらせ、間違いなくわれら一族の滅亡をもたらすことになってしまいますぞ。」

 善人ではあるが優柔不断で少し思慮の足りぬドリタラーシュトラ王は、ヴィドラの言うこともよく理解できましたが、息子への愛着ゆえに、結局ドゥルヨーダナの要求どおりに、さいころ賭博にユディシュティラを誘い込む計画を実行することにしました。
 こうしてドリタラーシュトラ王の命を受けて、ヴィドラは、さいころ賭博への招待状を携えて、ユディシュティラのもとへと向かったのでした。

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