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要約・ラーマクリシュナの生涯(17)「マドゥラ・バーヴァのサーダナー」

17 マドゥラ・バーヴァのサーダナー

 あるときはゴダドルは、マドゥラ・バーヴァ(至高者を愛人と見る態度)のサーダナーに没頭した。

 この頃ゴダドルは、美しいヴラジャのゴーピーになりきるために、女性用の衣や装身具を欲しがり、モトゥルがそれらをすべて用意した。モトゥルは、ゴダドルの女装をより完全なものにしたいと思い、カツラや黄金の装身具までも用意した。これらの一件奇異な行動は人々の中傷を呼んだが、ゴダドルとモトゥルは、そのような人々のアラ探しのおしゃべりには一向にかまわず、目標に向かって進んだ。モトゥルは、ゴダドルがこのようなことを意味なくおこなっているわけではないとよく知っていたので、自分の用意した装身具でゴダドルが満足しているのを見ると非常に喜んだ。

 こうしてゴダドルは女性の装いに身を包みつつ、クリシュナを愛するヴラジャのゴーピーたちのムードに深く溶け込んだので、自分は男性であるという意識は消えてしまい、思いや行動の一つ一つが女性的になってしまった。このムードは約六ヶ月間続いた。

 当時ゴダドルはその女性的なムードのままで、ときどきラニ・ラスモニの家に行き、奥の間にいる婦人たちと共に時を過ごした。彼女たちはすでにゴダドルを神と見ており、しかもそのときはゴダドルの女性的な振る舞いと、彼女たちに対する純粋な心遣いと愛情にすっかり魅せられてしまい、自分たちの仲間の一人としてゴダドルを受け入れた。

 ゴダドルは毎日、花を摘み、綺麗な花輪を作ると、それでラーダー・ゴーヴィンダを飾った。また、ヴラジャのゴーピーたちのように、『クリシュナを私の夫にしてください』と、宇宙の母に対して懇願した。
 ひたむきな心でクリシュナの御足に仕え、熱心な祈りと渇仰のうちに日々を過ごした。その熱心な祈りは、昼も夜もやむことはなかった。何週間、何ヶ月経っても、ただの一インチも、絶望や信仰不足がやってきて彼をそのあこがれから動かすことはなかった。その祈りはやがておびただしい涙に変わり、渇仰は不安となり、愛しき者への思いにやせ衰えたゴダドルは一種の狂気の様を呈し、食事も眠りも断った。
 
 そしてあるときからゴダドルは、ラーダーの恩寵なしにはクリシュナのヴィジョンを得ることは不可能であることを理解し、愛の権化であるラーダーを思うことに没頭した。その結果ゴダドルは、色欲のいささかの影もないラーダーの神聖な姿のヴィジョンを見、そしてそれがゴダドル自身の体の中に消えていくのを見た。

 後にラーマクリシュナはこう言った。

「クリシュナへの愛ゆえに一切を捨てたラーダーの、比べるもののない、純粋な、輝かしい姿の美しさを言い表すことができようか。
 彼女の身体の光輝は、ナーガケーシャラの花の花粉のように、黄色く輝いていた。」

 このときからゴダドルは完全にラーダーと一つになり、マドゥラ・バーヴァの最高状態であるマハーバーヴァのすべてのしるしが、かつてのラーダーやチャイタニヤの場合と同じように現れた。
 ラーマクリシュナは後にたびたび、弟子たちにこう言った。

「バクティの聖典に、一つの器の中に現れた19種類の感情を、合わせてマハーバーヴァと呼ぶのだと書いてある。人の一生は、たった一つのこのような感情において完璧に達するまで、それの修行に費やさなければならないのである。19のそのようなムードは、ここ(ラーマクリシュナ自身の身体)、つまり一つの器の中に全部一緒になって完全にあらわされた。」

 たとえばこの頃、クリシュナとの別離の強烈な感じの故に、ゴダドルの身体の毛穴の一つ一つから実際に血がにじみ出た。全身のすべての関節はゆるみ、または外れたような感じになり、感覚器官は完全に動きを止め、身体はときどき死体のように動かなくなり、意識を失って横たわった。

 ラーダーラーニーの恩寵を経験して間もなく、ゴダドルはついにクリシュナの神聖なヴィジョンに恵まれた。そしてそのクリシュナもまた、ゴダドルの身体の中へと溶け込んでいった。それ以降、ゴダドルはクリシュナの思いの中に完全に自己を失い、ときどきは自分自身をクリシュナと見、またブラフマー神から草の葉に至るまでのすべての生命をクリシュナの様々な姿と見た。

 実はカルカッタに出てくる前の少年時代にも、ゴダドルは、マドゥラ・バーヴァへの願望を持ったことがあった。ヴラジャのゴーピーたちがシュリー・クリシュナを愛によって彼らの霊的な夫としたという話を聞いて、ゴダドルはいつも、自分ももし女性に生まれていたら、クリシュナを夫として愛する恵みが受けられたのにと思った。そこで彼は、もし自分がまた生まれ変わるならば、長い髪を持つ美しい少女のままで未亡人となり、夫としてクリシュナ以外の者には仕えないようにしよう、などということを心に描いた。ごく粗末な衣食に満足し、小屋のそばの狭い土地で、自分が食べる野菜を作ろう。そして保護者である一人の年輩の婦人と、一頭の牝牛と、紡ぎ車とがある。――少年の想像はどんどん発展した――昼間は、家事を終えたらその紡ぎ車でクリシュナの歌を歌いながら糸を紡ごう。日がくれたら、牝牛の乳から作ったお菓子を、誰にも知られずに、自分の手でクリシュナに食べさせてあげたいと思ってひどく泣くだろう。するとクリシュナも喜んで、牛飼いの姿でやってきて、それを食べるだろう。このようなクリシュナとの交流は、毎日、誰にも知られずに繰り返されるだろう――と。
 ゴダドルのこのような少年時代の想像は、来世生まれ変わったら・・・・・・というものであったが、生まれ変わりを待たずとも、ゴダドルはマドゥラ・バーヴァの成就によって、ついにクリシュナとの実際の交流及び一体化を得たのだった。

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