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菩薩の道(9)至高の智慧の力

9.至高の力--優れた智慧の力

 布施によって功徳を積み、持戒によって悪を滅し、忍辱によって過去の悪を滅し、精進によって善業の増加と悪業の滅尽を徹底加速させ、禅定によって渇愛から解脱して心の湖を静止させ、そして二元を越えた絶対の智慧を得る。
 その後に再び二元の世界に戻って智慧を駆使して救済を行い、その衆生救済の誓願を不動のものにする。
 そうなるとこの菩薩は、もう完成へ向けて、つまり仏陀の境地へ向けて一直線に進むだけとなります。そうしてこの第九段階では、救済に必要な様々な優れた智慧と力を自分のものとするようになるのです。

 たとえば教えには様々な教えがあります。修行法にも様々な修行法があります。道にも様々な道があります。しかし普通は、それらすべてを知ったり理解する必要はありません。

 平地からヒマラヤの山頂に行くのに十の道があったとします。道はその一つを知れば行けます。たとえばインドのある地方からの道を知れば、他のインドからの道や、チベットからの道、ネパールからの道などを知る必要はありません。また、そのインドからのある道を進む上での、その地方のその季節の天候や、周りの様々な状況を知る必要はありますが、他の地方のことを知る必要はありません。
 同様に、真理のダルマが示す様々な現象分析、そして実際の修行法というのは様々なものがあるわけですが、自分が解脱し、悟るための方法と現象分析だけを理解すれば、普通は十分なのです。
 しかし菩薩の場合は別です。菩薩は、様々なタイプの衆生を、さまざまな方法で救わなければなりません。よって、あらゆる真理の、あらゆるタイプの教えを理解し、あらゆるタイプの修行法を理解し、自分でも身につけ、そしてあらゆるタイプの衆生に教えを説き、あらゆるやり方で救済を行なえるようにしなければならないのです。

 もう少しまとめますと、この段階の菩薩は、様々な衆生の心やカルマの状態を、如実に知ります。そしてどのようなタイプの衆生にはどのような教えとどのような修行法が必要であるかを知り、またどのような救済方法が最適かを如実に知るのです。これらすべてを知る智慧と、それを実行する力を得るのです。
 よってこの菩薩は、縁によってどんな世界に生まれようとも、どんな衆生を前にしようとも、最も最適な方法で、救済を行なうことができるのです。
 そしてすでに第七段階において、多くの化身を使って様々な世界に救済に出向く力を得ていますので、この菩薩は、無数の世界に化身で現われ、無数の衆生にそれぞれにあった教えを自在に説き、救済するのです。

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