パトゥル・リンポチェの生涯と教え(11)
◎忍辱のパーラミター
あるときパトゥルはある隠者を訪ねてみることにした。その隠者は長い間、完全な隠遁生活を送っているらしかった。
パトゥルは来訪を告げずに、その隠者の隠遁所にやって来た。彼はニコニコしながら、そうしても聞きたかった質問を胸に、隠者の洞窟の隅っこに腰を下ろした。
「どこから来られましたか?」
隠者は礼儀正しく質問をしてきた。
「そして、どこに向かっているのですか?」
「私は後方から来ました。」
パトゥルは答えた。
「そして前方へ向かっています。」
隠者は困惑して、こう尋ねた。
「出身はどちらですか?」
「地球です。」
世捨ての隠者は、予期せぬ風変りな訪問者の言動をどう解釈しらたいいのかよくわからなかった。
そのすぐ後に、パトゥルは隠者に、すべてのものから遠く離れて、そのような人里離れた地で暮らしている理由を尋ねた。
「私はここに十二年間暮らしています。」
隠者は、声にある種のプライドを帯びさせて言った。
「今、私は忍辱の完成(パーラミター)について瞑想しているのですよ。」
それを聞いて、パトゥルは大声で笑い、面白がって腿をピシャピシャと叩き始めた。
「それは結構な!」
パトゥルは声を上げてそう言うと、隠者に向かって身を乗り出した。そしてひそひそ声で、隠者の耳にささやいた。
「二人の老いぼれのペテン師であるわれわれは、そんなに悪いことをしているわけではありませんよねえ?」
隠者の怒りが爆発した。
「貴様は、何様のつもりだ! ここへノコノコとやって来て、わしの隠遁所を台無しにしおって! 誰に差し向けられた? なぜ、この貧しい修行者に、平穏のうちに瞑想させてくれんのじゃ!」
隠者は怒鳴り散らした。
パトゥルは心の中で呟いた。
「ふむふむ、あなたの”忍辱の完成”とはその程度のものですか!」