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「解説『スートラ・サムッチャヤ』」第一回(3)

【本文】

 如来、最高の正覚者たちが世に出現することは稀である。それはウドゥンバラの花の如くである。

 そして衆生が人間として生まれることもまた稀であり、人間として生まれた者が如来に出会うということは非常に稀なのである。

 お釈迦様は、次のように説かれている。

「世尊はこうお説きになった。
 『もろもろのビックよ。たとえばこの大地がすべて水で覆われているとしよう。その水の中に、ある人が、穴のあいたくびきを捨てたとする。そのくびきは、東の風が吹けば西に流され、西の風が吹けば東に流される。北の風が吹けば南に流され、南の風が吹けば北に流される。
 その水の中に、盲目の亀が住んでいた。およそ百年に一度、その盲目の亀が水面に出現するとする。
 ビックたちよ、このことをどのように考えるか。百年に一度水面に顔を出した盲目の亀は、水面をただようそのくびきと出会い、その穴に首を入れるであろうか。』
 ビックたちは答えた。
 『尊師よ、その盲目の亀がそのくびきの穴に偶然首を入れることは、大変まれなことであり、得難いことであります。』
 世尊はこうお説きになった。
 『ビックたちよ。このように、人としてこの世に生まれることは実に得難い。そしてもろもろの如来が世間に出現し、悟りを得て、法を説くことは、実に得難いのである。』

 はい。これもね、いろんなところに出てくる例えなので、何度も聞いてると思います。まず最初の「ウドゥンバラの花の如く」ってありますが、まあこれはよく出る例えで、まあこれは伝説的なね、ウドゥンバラっていう花があるといわれてて、それもまあ本当に稀にしか咲かないといわれる花だね。まあでもこれは一つの伝説なので、われわれにあまりちょっとピンとこないかもしれないけど。
 はい。そして「衆生が人間として生まれることもまた稀であり、人間として生まれた者が如来に出会うということは非常に稀なのである」と。これは分かりますね。つまり人間として生まれるのがまず稀であると。で、仏陀の出現も稀であると。で、その二つがバチッと合うっていうのはものすごい稀なことなんだということですね。
 はい。で、このくびきの例え、これもよく出る例えで――つまりこれはちょっともう一度ね、説明すると、巨大なね、大海の中――つまり太平洋みたいな海の表面ね――を、プカプカと――まあくびきっていうのは牛の鼻につける輪っかですが――だから単純に輪っかでもいいです。輪っかが浮いてますと。それはもちろん計画的に置かれてるわけじゃないので、風によって適当にもうブラブラ浮いてると。で、その海の中に巨大な亀がいて、で、この亀っていうのは、まず盲目であると。盲目、つまり目が見えない。そして、百年に一度だけ息を吸いにプカーッとこう水面に顔を出すと。こういう条件ね。これは皆さん分かると思うけども、この亀が盲目であるっていうのは、われわれの無智の象徴です。つまり、われわれはまず無智であると。何が真理なのか、何が真理でないのか全く分からない。これが亀が盲目っていうことですね。で、百年に一度顔を出すっていう象徴は、これは、つまりわれわれが人間界に生まれることが難しいっていうことです。つまりほとんどわれわれは無智で、しかも、地獄・動物・餓鬼を行ったり来たりしてるんです。でもたまーに人間になるんだね。
 で、ここで分かるね。この輪っかっていうのは真理の象徴です。つまり、たまーにしか、百年に一度ぐらいしか海面に顔を出さないのにね、その無造作に太平洋に置かれた輪っかがね、しかも亀は盲目だから、偶然その輪っかに首を入れることができるだろうかと。できるかもしれないね。でも、それはすごい確率だよね? 本当にありえないぐらいの奇跡的な確率で、スポッとはまるわけです。これが、われわれが人間に生まれ、そして真理っていうものに巡り合う確率なんだよって言ってる。これはお釈迦様の仏典にも出てくるし、シャーンティデーヴァとかもよく引用する素晴らしい例えですね。これもだからしっかりと修習して、自分がね、今人間になってしかもこうして修行できてることの稀有さっていうかな、それをすごくこう自分に言い聞かせなきゃいけないね。
 で、いつも言うように、ここには書かれていないけど、しかもわれわれはいつ死ぬか分からないんです。ね。この類稀なチャンスを得たと。しかもこれはいつ終わるか分からない(笑)。明日交通事故で死ぬかもしれないよ。あるいはいきなりね、脳卒中とかで倒れるかもしれない。何があるか分からない。だったら何をさておいても――まあもちろんそれぞれの条件があるだろうけど、その条件の中で、限界の全力のその努力をしなきゃいけない。全力の自分を向上させる道に励まきゃいけないってことですね。
 はい。ここまでは特に質問ないかな? はい。じゃあ次いきましょう。

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