パトゥル・リンポチェの生涯と教え(95)
◎パトゥルがタマ・ルンでゾクチェンを説く
ゾクチェン修行の力は、直接的な経験にある。パトゥルはよく、これらの修行のいくつかを実践するために、荒野に出て行った。
パトゥルの師ジグメ・ギャルワイ・ニュグが何年もの年月を独居修行に費やしたザチュカ北部の渓谷にあるタマ・ルンで、パトゥルはオンポ・テンガ(オルギェン・テンジン・ノルブ)とその他の幸運な弟子たちに、詳細な瞑想の指示を与えた。
まず最初に、パトゥルは「輪廻とニルヴァーナの識別」という特別なゾクチェンの前行を説いた。そしてそののちに、本行であるテクチューとトゥーゲルを説いた。パトゥルが修行方法の教えや指示を与えると、皆はそれを修行し、パトゥルも弟子たちと一緒に修行した。
オンポ・テンガはのちにこう述べている。
「われわれは皆、それ以前にゾクチェンの教えを授かっており、すでにゾクチェンの瞑想のやり方も教わり、実践をしていた。中には、その教えを他者に教えている者たちもいた!
だが、われわれの”理解した”と思っていたものが、結局は取るに足らないものであり、推測や空想に過ぎなかったということが分かった。パトゥルがタマ・ルンでわれわれに授けてくださった詳細な口頭の教えは、彼ご自身の瞑想経験に基づくものであった。彼の指示に従うことで、われわれはその修行の成果として、実際に直接的な経験を得ることができた。われわれは目的を達成することができたのだ。その経験は、手のひらの中にあるものを見ているかのように、直接的であり、明らかなものだった。
あなたはゾクチェン修行者であり、ありのままに生じる意識を認識したことがあるかもしれないが、『輪廻とニルヴァーナの識別』のような修行とグルヨーガの深い信仰をブレンドすれば、さらに進歩するであろう。
このすべてが、タマ・ルンで明らかになったのだ。」
パトゥルは、根本グルへの熱烈な信仰なくしては、ゾクチェンの悟りは決して得られないと強調した。年を取るにつれて、パトゥルは一晩中ロンチェン・ニンティクのグルヨーガをやるようになっていった。近くにいた人々は、「尊師、蓮華から生まれたグルよ、わたしのことを思いたまえ!」と低い声でパトゥルが唱えているのを耳にした。
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