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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(7)

◎ド・キェンツェーがパトゥルに不意打ちをかける

 パトゥルは、悟りに達した修行者であり、無為自然の予測不可能な行動で知られる大成就者である狂気のヨーギー、ド・キェンツェー・イェーシェー・ドルジェに対して深い信仰心を抱いていた。ド・キェンツェーは、ジグメ・リンパの転生者として認識されていた。

 あるときド・キェンツェーは、ダチュカのパトゥルの故郷に旅をしようと決めた。彼は歩いて旅を始め、驚くべき速さで到着したのであった! 彼は、その到着した日の朝に出発したと主張した。――その旅程は、通常では馬に乗って二週間かかるというのに! 
 パトゥルはそのとき、ゾクチェン僧院の上方にある洞窟や隠遁所のある地帯で暮らしていた。パトゥルはド・キェンツェーの到来の知らせを聞くと、ただちに彼を探しに向かった。彼は町に降り、ゾクチェン村の外で座っている師を見つけた。
 パトゥルが視界に入ると、ド・キェンツェーは大声でパトゥルに呼びかけた。

「よう、パトゥル! 度胸があるなら、こっちへ来てみたらどうだ?」

 近づいていくとパトゥルは、ド・キェンツェーがチャン(発酵した大麦から造るチベットの強い醸造酒)を飲んでるということに気づいた――息が酒臭かったのだ。アルコールによる有害な影響についてのブッダの教えを思い出し、パトゥルはこのように思い始めた。

「偉大な師でも、ぐでんぐでんに酔っぱらうと、こんな無法者のような行動をとってしまうのだろうか?」

 その瞬間、ド・キェンツェーはパトゥルを掴み、乱暴に地面に投げつけると、髪を掴んでパトゥルを引きずりまわし始めた。そして今度は掴んでいた手を緩めると、パトゥルを投げ飛ばしたのだった。
 ド・キェンツェーは激しくパトゥルを睨みつけ、「パー!」と叫んで、パトゥルの顔に唾を吐いた。

「おい、老犬、お前の頭は、まだ概念がぎっちり詰まっている!」

 チベットの文化では、「老犬」と呼ばれることは、相当な侮辱である。
 さらに、ド・キェンツェーはパトゥルに小指を突き立て――完全なる蔑みを意味する――パトゥルに石を投げ始めた。石がパトゥルの背中にまともに当たると、ド・キェンツェーは大股で歩き出し、姿を消した。

 起こったことをパトゥルが理解するには、少し時間がかかった。ショックでかなり動揺した後、彼は自分が完全に修行の要点を外していたことを悟ったのであった!

 パトゥルは、ド・キェンツェーが心の真の本性の深遠で直接的な教えを彼に与えたのだと思った。師に対する感謝と信仰に満たされて、パトゥルは瞑想の姿勢で座ると、裸の意識――広大で、ありのままに生じ、雲のない空のようにクリアで、散漫な思考から解放された意識――の中に心を安らがせ始めた。

 後年、彼は、「老犬」とは、師ド・キェンツェーによって快く授けられた秘密のイニシエーションの名前だと言っていた。それどころかパトゥルはのちに、自分の著作の多くに「老犬」と署名したのであった。

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