yoga school kailas

◎離欲

【本文】
ドリシュターヌシュラヴィカヴィサヤヴィトリシュナシャ
ヴァシカーラサムジュニャー ヴァイラーギャム

現に見たり、あるいは伝え聞いたりした対象のすべてに対して無欲になった人が抱く、克己者たる自覚が、離欲である。

 はい。これは今度は修習と離欲の離欲の方の説明だね。
「現に見たり、あるいは伝え聞いたりした対象のすべてに対して無欲になった人が抱く、克己者たる自覚が、離欲である」。
 これはこのままなんだけど、欲から離れる――ここでいう「欲」というのは、単純に言うと、執着と嫌悪。つまりその対象に対する強い執着と、逆にその嫌悪の心。そこから心というのは、どんどん展開するわけです。
 一つの例を挙げると、歩いていたら道でいきなり見知らぬ男に罵倒された――これは一つの経験ですね。はい、罵倒されました。ここで嫌悪が出ます。「え? 何だこいつは」と。ムカムカッとくる。ムカムカってきて、それが増大します。まずは最初の、なんとなくムカムカっとくる。その後にその相手を見て――いろんなパターンがあるよね――相手を見て弱そうだったら、よりムカムカっとなる(笑)。「おれは勝てるぞ、こいつ。なんでこんな変な奴がおれに罵倒するんだ!」ってどんどんどんどん増大する。で、本当に相手がちょっと弱そうで、自分が闘争心が強まったら、本当に口で相手に言い返すかもしれない。あるいは最悪の場合は、殴りつけるかもしれない。この一連の動きっていうのがある。
 でも離欲者というのは、そのような経験があっても、まず怒りが出ない。あるいは出たとしても、それをそこから増大させないというか――これが現実的な説明だね。
 もちろん執着もそうですよ。いろんな経験を日々する。これも仏教的にいうと、十二縁起の動きをどれだけ止めるかっていうことだね。いろんな経験をして、心がバッと動き出して、どんどんどんどんそっちの方にはまっていく。これをいかに止めるか。
 で、離欲っていうのは、日々もちろん――いつもバガヴァッド・ギーターとかで言っているように――いろんな経験をしないとわれわれは生きられないんです。生きているっていうのは、経験の連続だから。その経験の中で、いろんなものに執着したり嫌悪したり。この繰り返しが人間なわけだけど、離欲者――離欲を得たものというのは、いちいちそういったものに執着とか嫌悪が出ない状態だね。これもだから最後のことをいっているわけだけど。ただただカルマによって、もしくはバクティ的にいえばね、神の意思によって、展開されるいろんな経験・現象に対して、一切執着も嫌悪も希望も恐怖も抱かない状態だね。これが離欲ですよと。
 もちろんこれは理想なので、ここはわれわれが日々目指さなきゃいけないところだね。日々いろんなことの中で、いろんなことに執着とか嫌悪の気持ちを出さないようにしなきゃいけない。それは何でもそうなんだね。人間に対してだけでもなくて。
 例えばさっきの出来事で言ったらさ、Nさんのお尻が濡れたと(笑)。このときに「あ、なんで濡れるんだ。なんでおれは濡れなきゃいけないんだ」と(笑)。これはもちろん駄目なわけだね。そこでさっきみたいに、「ああ、カルマですね」と。これで全く問題ないわけです。でも普通は、そこでいろんな展開があるんだね。それは単にまさにカルマだねっていうのは真実であって、ただカルマによって濡れた――それだけなんだね。
 これは他人だとよく分かるよね。例えば私から見たら、Nさんがお尻が濡れようが(笑)、それはカルマで濡れた、それだけなんです。でももし私のお尻が濡れたら、私の自我が動き出すじゃないですか。つまり濡れたくないっていう気持ちがあったら、そこで濡れてしまったら、やっぱり嫌悪が出たりする。でもそれは自分というものにとらわれすぎているからだね。そういう感じで、あらゆる経験に対して、執着や嫌悪を出さないような訓練を日々しなければいけない。いろんな日々の実生活の中でね。はい、だからこれは結論を言っているんだけど、われわれの実践としては、日々それを目指すということだね。

◎至高の離欲

【本文】
タットパラン プルシャキャーテールグナヴァイトリシュニャム

その至高のものは、真我についての真智を得た人が抱くものであって、三グナそのものに対する愛着からさえも離れることである。

 はい。離欲の説明の続きね。離欲というのは、さまざまな心の執着や嫌悪とかそういうものから離れていくことなんだけど、その最高段階というのは三グナ――つまりこの宇宙を動かしているおおもとのエネルギー――これに対するとらわれからも、離れてしまった――つまり真我についての真智ね。完全にマーヤーから解放された状態。完全にあらゆるこの幻影の根本的なものにさえも、心がひっかからなくなった状態だね。だからこれも最後のことをいっています。

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