仏弟子の物語(8)「ヴィーラ」
ヴィーラ
ヴィーラは、今から九一カルパ前に、世尊ヴィパッシンの住居を警護した。そしてある日、ニッグンディの花を世尊ヴィパッシンに供養した。この功徳によって、死後、天界と人間界を何度も生まれ変わり、そして今から三五カルパ前に人間界に生まれ、マハーパターパという名の偉大な王となり、多くの人々を展開への道に安立させた。
そしてその後、世尊カッサパの時代に人間界の長者として生まれ、貧困者、旅行者、そして出家教団に布施をした。
このようにして天界と人間界で功徳を積み重ねたのちに、お釈迦様の時代に、サーヴァッティのパセーナディ王の大臣の家に生まれ、ヴィーラ(勇者)と名付けられた。彼は成年になると名前にふさわしい強さをそなえ、戦場の勇者となった。
そしてその後、両親の願いによって結婚し、息子も生まれたが、過去世からのカルマに促され、この輪廻の生活の中に禍を見て、世尊釈迦牟尼のもとで出家した。そして努力して修行して、ほどなくして六神通を得たアラハットとなった。
さて、このようにアラハットの境地に達し、アラハットの静慮の楽に安らいでいるヴィーラを、かつての妻が還俗させようとして、様々な方法で誘惑した。
ある日、また彼女がやって来て、女性的ななまめかしいしぐさなどでヴィーラを誘惑しようとした。するとヴィーラは、「私を誘惑しようとする女は、スメール山を蚊の羽の風で動かそうとするようなものだ。ああ、この女はそれくらい愚かなのだ」と言い、さらにこのような詩を唱えた。
「制御しがたかったが、今や調御によって制御された勇者は、満足し、疑惑を超えている。ヴィーラは、身の毛の逆立つことのない勝利者であり、安らぎに達し、安立している。」