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要約・ラーマクリシュナの生涯(25)④

◎ケシャブ・チャンドラ・セン

 母が亡くなる約一年前、ラーマクリシュナの生涯において重要な意味を持つ一つの出来事が起こった。法悦状態にあるときに、母なる神から、ブラーフモー・サマージの指導者ケシャブチャンドラ・センに会うようにという指示が下りたのである。
 そこでラーマクリシュナはフリドエと共に、ケシャブが弟子たちと共に修行をしていたある別荘を訪ねた。まずフリドエがケシャブのもとへ行き、こう言った。

「私の叔父は神の深い信者でして、ハリの話や歌を聞くのが大好きです。それらを聞くうちに霊感を受けて忘我の状態に入ります。彼は、あなたが偉大な信者であられることを聞き、神の栄光に関するお話しを聞こうと思い、やってきました。もしあなたがご承知くださるなら、ここへ連れてきますが。」

 ケシャブが承知したので、フリドエは馬車からラーマクリシュナを連れてきた。フリドエの話を聞いて、ケシャブと弟子たちは、どんな聖者が来るのだろうと期待していたが、やってきたラーマクリシュナが一見聖者っぽくなく、ごく普通の人間にしか見えなかったので、がっかりしてしまった。

 ラーマクリシュナはケシャブと話をするうちに、サマーディに入った。しかしそれを見ても、ケシャブと弟子たちはそれが霊的に高い状態であることを理解できなかった。ただふりをしているだけか、または頭がおかしいのだろうと思った。
 フリドエが耳元でオームを唱えると、ラーマクリシュナは通常意識を取り戻し、様々な巧みな例えを使いながら霊的な話をした。今度は一同はその素晴らしい話に魅せられて、時が過ぎるのを忘れた。
 ラーマクリシュナはケシャブに、「あなたのしっぽはもう落ちている」と言った。その意味がわからず、ケシャブの信者たちは不快な様子をあらわしたが、ラーマクリシュナはその真意を説明した。

「オタマジャクシはしっぽをつけている間は水の中にしか住めないでしょう。しかししっぽが落ちると、水の中だけでなく、陸上でも生きることができるようになります。ちょうどそのように、人は迷妄というしっぽをつけている間は世間という水の中にしか住むことはできません。しかししっぽが落ちると、サチダーナンダに住み、同時に自由に世間を動き回ることもできるようになります。おお、ケシャブ、あなたの心はもう、世間にもサチダーナンダにも住めるような状態になっている。」

 ラーマクリシュナはこのような様々な話をして長い時を過ごした後、ドッキネッショルへと帰った。

 この初対面の日からケシャブはラーマクリシュナに強く惹きつけられた。その後彼はたびたびドッキネッショルを訪ね、またラーマクリシュナを自分のカルカッタの屋敷へと招待した。両者の間柄は、数日会わないとどちらも会いたくてたまらなくなるほどだった。
 またケシャブは、ブラーフモー・サマージの会員達と共にラーマクリシュナの話を聞いて一日を過ごすのを、ブラーフモー・サマージの聖なる行事の一つとまで考えていた。

 あるときラーマクリシュナはおどけてこう言った。

「ケショブ、お前は講演で実に多くの人々を魅了する。私にも何か話してくれないか!?」

 するとケシャブはへりくだってこう答えた。

「師よ、私が針を売りに鍛冶屋の店に参るでしょうか? どうぞ、あなたが何かをお話しになって私にお聞かせください。人々は、私があなたのお言葉の少しばかりを伝えると、たちまちうっとりとしてしまうのです。」

 人間の心は、様々なショックな出来事や苦難によってひどく傷つけられでもしない限り、世俗を捨ててすべてを神にあずけ、神を悟りたいという真剣な思いになる事は難しい。ケシャブがラーマクリシュナと出会って三年が経った頃、ケシャブにもそのような祝福である苦難がやってきた。ケシャブが自分の娘を、当時のブラーフモー・サマージの規律に反するやり方で結婚させたことで大きな騒動を引き起こし、多くの会員達がケシャブを批判し、ブラーフモー・サマージは二つに分裂してしまったのである。しかしこの出来事によってケシャブの心は以前によりも内に向かうようになり、よりいっそう真剣に霊性の道を歩むようになった。

 1884年、ケシャブは病気によりこの世を去った。このときのラーマクリシュナの反応が、ラーマクリシュナがケシャブをどれほど深く愛していたかを物語っていた。ラーマクリシュナはこう言った。

「私はその知らせを聞いたとき、三日間、床を離れることができなかった。まるで手足の一本が麻痺したかのように思われた。」

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