クリシュナ物語の要約(14)「悪魔ブラランバの救済」
(14)悪魔プラランバの救済
季節は夏になりました。あるとき、クリシュナとバララーマが、いつものように仲間の子供たちと遊びながら、緑の草原で牛を放牧させていると、プラランバという名の悪魔が、クリシュナとバララーマをさらおうとして、牛飼いの子に変装してやってきました。
クリシュナはその正体をただちに見破りましたが、気づかぬふりをして、皆を呼び集めて言いました。
「牛飼いのみんな、これから二組に分かれて遊ぶことにしよう!」
その遊びでは、クリシュナとバララーマがそれぞれの組の大将となり、騎馬戦ごっこのようにして戦いました。そして負けたほうの組の子供たちが、勝った方の組の子供たちを、自分の背に乗せて運ぶといういうことになったのです。
そしてクリシュナの組の方が負けたため、クリシュナについた子供たちは、バララーマについた子供たちを、背に乗せて運ぶことになりました。
このとき、子供に変装した悪魔ブラランバはクリシュナの組についていたため、バララーマを自分の背に乗せました。しかしバララーマはどんどん重くなっていき、ついには山のように重くなったため、ブラランバはついに自分の正体である悪魔の姿をあらわしてしまいました。
ブラランバはその不気味な悪魔の姿をあらわすと、バララーマを背に乗せたまま、空高く飛んで行こうとしました。しかしバララーマはその悪魔の頭に、強烈な鉄拳を振り下ろしました。すると悪魔の頭は粉々に砕かれ、口から血を吐いて死んでしまいました。
バララーマが悪魔を殺したのを見ると、子供たちは非常に驚き、
「ああ、よくやったね! おめでとう!」
と祝福し、皆でバララーマを抱きしめ、賞賛したのでした。
天から一部始終を見ていた神々も、罪深き悪魔ブラランバが聖なるバララーマによって命を絶たれたのを見ると、バララーマの上に無数の花の雨を振りまき、
「ああ、良くなされました。おめでとうございます!」
と叫んだのでした。
このようにして牛飼いの子供たちが遊びに夢中になっている間に、草を食んでいた牛たちは、いつの間にか森の奥深くへと迷い込んで行ってしまいました。
クリシュナをはじめとする子どもたちは、自分たちの不注意を後悔し、牛を捜しに行き、ようやく牛たちを発見したのでした。
子どもたちが喜んでいると、今度はその森に巨大な野火が発生し、あっという間に森中を焼き始めました。
あらゆる方向から自分たちに炎が迫ってくるのを見ると、子供たちは完全に怯えてしまい、クリシュナとバララーマに次のように言って助けを求めたのでした。
「ああ、クリシュナ、クリシュナ、偉大なる英雄よ。そしてバララーマ、大いなる武勇を持つ者よ。助けを求める僕たちを、どうかあの野火から救ってください。
ああ、クリシュナ、ああ、ダルマを知るお方よ。僕たちにとってはあなただけが教師であり、究極の庇護処なのです!」
するとクリシュナは子供たちに、
「こわがらずに眼を閉じていなさい!」
と言いました。
クリシュナを完全に信頼している子供たちは、
「わかりました!」
と言って眼を閉じました。
するとクリシュナは、口を開けると、その恐ろしき炎を一気に飲み干したのでした。
子供たちが眼を開けると、あんなに大きな炎がすべて消えており、クリシュナがそれらをすべて消したのだと知ると、大変驚いたのでした。
やがて日が暮れると、クリシュナとバララーマ、そして仲間の子供たちは、牛をつれて、横笛を奏でながら、ヴラジャへと帰ってきました。
帰ってきたクリシュナの姿を見ると、ゴーピーたちは大いに喜びました。まことに彼女たちにとっては、クリシュナがいなければ、たったひとときでさえも、まるで百ユガの長さのように感じられるのでした。
つづく
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