アディヤートマ・ラーマーヤナ(6)「カウサリヤーの賛嘆と主の返答」
◎カウサリヤーの賛嘆と主の返答
主の神聖なる御姿を見てあっけに取られ、カウサリヤーは合掌して礼拝し、喜びの涙で眼を溢れさせて、彼にこう言った。
一切の神々を超越した主よ。法螺貝、円盤、矛のような神聖なる印をつけられし者に礼拝し奉ります!
おお、主よ、あなたは至高なる魂であり、一切の存在の最高者であり、永遠なる者であり、一切に遍在し、限定のない者であります。
ヴェーダを知る者はあなたを、言葉によっては述べることができず、知性の概念的作業によっては理解することができないと宣言しています。あなたは感覚の範囲を超越し、純粋なる存在としての一切の衆生の本質であり、あなたの御姿は純粋なる意識の本質なのです。
マーヤーとして知られるあなたの御力によって、あなたは、ラジャス、サットヴァ、タマスを伴って、宇宙を創造し、維持し、破壊しています。しかしこの一切の創造的活動によって影響を受けることなく、あなたは、覚醒、夢、眠りという三つの状態を超越し、永遠に純粋なる存在であられるのです。
あなたは何かを行なっているように見えますが、行為者ではありません。あなたは動いているように見えますが、動いておりません。あなたは何かを聞いているように見えますが、何も聞いていません。あなたは何かを見ているように見えますが、何も見ていません。
プラーナを持たず、心を持たず、けがされることなく――ヴェーダは、あなたについてこのように宣言しています。あなたは修飾されることのない存在のように一切の衆生の中に住んでいるにもかかわらず、一切の知識の外にいらっしゃるのです。
このように、あなたは無智の暗闇で覆われた心を持つ人々の範囲外にいらっしゃるにもかかわらず、純粋な心に恵まれた人々は、はっきりとあなたを知覚するのです。宇宙を含む一切の世界のシステムは、あなたの腹部にある微細な原子に過ぎません。
世界の方便に従って、あなたは私の胎内からお生まれになりました。おお、あなたは、ラグ族で最も気高き者であります! 今日、あなたのこの哀れみによって、私は如何にしてあなたがあなた御自身をあなたの信者に従属させるのかを理解することができました。
転生のサイクルである輪廻の海に沈み、そしてあなたの幻影の御力によって、夫、子供、富、その他の世俗的関心物との迷妄なる関わり合いを強いられる私が、今日、あなたの聖なる御足に到達したのです。
おお、主よ! このあなたの御姿が永遠に私の心の中で感銘され続けられますように。そして、全世界を迷妄にするあなたの御力マーヤーが、私に影響を及ぼしたり、征服したりしませんように。
宇宙に遍在する魂よ! あなたのこの超人的御姿を隠し、それを見る一切の者に至福を与える幼児としての魅力的な御姿をお見せください。私は、幼児としてあなたを見なし、愛おしく抱きしめることで、無智の恐るべき闇を乗り越えるでしょう。
主は仰った:おお、母よ! すべてがあなたの望みのようになるだろう。それは決して違ったようにはならないであろう。
私は過去にブラフマーによって、ラーヴァナを滅ぼすことでその重荷を地球から取り除くことを懇願された。この目的のために、私は今人間の姿で降誕した。それに加えて、おお、徳高き女性よ! あなたとダシャラタは昔、苦行を為し、息子として私を授かることができるよう祈ったのだ。
あなたが見たこの私の姿は、あなたがかつて為した苦行の果報としてあなたに与えられたヴィジョンである。さもなければ、この姿を経験することは誰にとっても不可能である。ゆえに、私のヴィジョンは、それを得る者たちに解脱を与えるのだ。
われわれの対話を学ぶ者たちや、それを聞いたり、読んだりする者たちでさえも、死のときに私を思い出し、私の姿の達成という解脱(サールーピャ)を得るだろう。
◎ラーマの幼年期、少年期
母にそう言うと、ラーマは幼児の御姿となり、生まれたての赤子のように泣き始めた。その幼児の御姿の中でさえ、彼は非常に美しい顔立ちをし、インドラニーラ宝珠のように青い御肌を持ち、とても大きな眼を持っていた。
彼は夜明けの太陽のように光り輝き、彼の御誕生を祝う方位の神々を見守っていた。息子の誕生という喜ばしい知らせを聞くや否や、ダシャラタ王はその御子を一目見ようと、家族の祭司ヴァシシュタを連れて、大いなる歓喜に浸りながら、走ってやって来た。
ダシャラタは、蓮華の花弁のような眼をお持ちの幼児のラーマを見ると、歓喜の涙を眼に溢れさせ、彼のグルに指示されたように、ラーマのための御誕生の儀式の一切を執り行なった。
その後、美しきカイケーイーはバラタを出産し、スミトラーは満月のような御顔をした双子を出産した。
歓喜で胸がいっぱいになり、ダシャラタは、彼の息子たちの誕生を祝って、聖者方に、多数の村、吉兆なる牛や衣服、それに加えて金や宝珠を布施した。
グル・ヴァシシュタはカウサリヤーの御子に、明智によって無明を払いのけられた聖者方が歓喜する(ラマンテー)者という意味のラーマという御名を授けた。彼は一切を歓喜(ラマナト)させるので、ラーマと呼ばれたのである――この御名にはまた、他の別の意味もある。
その他の御子たちも、グルに従って名づけられた。カイケーイーの御子は、偉大なる管理能力(バラナト)を有することになるので、バラタと名づけられ、スミトラーの双子の御子は、一人は、吉兆を示す一切の印(ラクシャナンヴィタム)に恵まれていたため、ラクシュマナと名づけられ、もう一人は、一切の敵を滅ぼす者(シャトルハンタラム)となるであろうから、シャトルグナと名づけられた。
スミトラーがカウサリヤーとカイケーイーから受け取ったパヤサの組み合わせに従って、御子たちは二人一組となって、ラーマはラクシュマナと、バラタはシャトルグナと共に遊びまわりまった。
ラーマとラクシュマナは、子供らしいいたずらをしたり、まねごとや無邪気なおしゃべりをして両親を喜ばせたのだった。
輝く真珠が中心に散りばめられたバンヤン樹の葉のような形の金色のティラカで額を飾り、中心に豹の爪のついた如意宝珠の首飾りをつけて他を魅了し、金で作られ、如意宝珠が散りばめられた耳飾りから輝くきらめきによって照らされた頬を持ち、チリンチリンという音を出す金の足輪、それに加えて腰帯、腕輪を身につけ、そして、御口の中のちょうど生え始めの歯を見せながら、インドラニーラ宝珠の青い輝きをお持ちラーマは、宮殿の中庭で子牛たちと遊んだりして、彼らを喜ばせたのだった。
ダシャラタは、食事を取るときに、ラーマと共に食べようと、大きな愛情と歓喜を持って、数回ラーマの御名を呼んだ。しかし遊びに夢中になっているラーマは、返事を返さないのだった。そこでダシャラタは顔に微笑をたたえ、カウサリヤーに、ラーマを連れて来るように頼んだ。しかしいくら追いかけても彼女は、ヨーギーの心によってのみ掴むことができる彼をつかまえることはできなかったのだ。
その後、口元に微笑をたたえて、ラーマは御自分の意思で父のもとへ行き、泥だらけの手でライスボールを受けとり、いま一度遊ぶために走って逃げていくのだった。
毎月、母カウサリヤーは誓いを守り、彼女がきれいに飾り立てた子供たちへの、一切の悪影響を弱めるための礼拝を捧げていた。彼女はまた、お供物としていろいろな甘いお菓子やごちそうを念入りに準備した。
ラーマのいたずらが理由で、彼女はしょっちゅう、家事を手放さなければならなかった。ある日ラーマが母のところへ来て、こう言った。「ああ、お母さん、僕、お腹すいた。何か食べるものをちょうだい。」
しかし、仕事に熱中していて、彼女はそれを聞いていなかった。これにラーマはかんかんに怒って、棒をとって、すべての器を壊した。
彼はつるされているミルクとバターなどの入った器を壊し、ラクシュマナとバラタにその中身を分け与えた。
その後、彼はカードとミルクをシャトルグナにもあげた。コックがそれを母カウサリヤーに報告すると、彼女はラーマを捕まえるために、笑いながら走ってやってきました。
彼女が近づいてくるのを見て、兄弟たち全員は逃げ回り、彼女は何か障害物に足をぶつけてよろめきながらも、彼らを追いかけ回すのだった。彼女は最後にやっとラグの主ラーマを捕まえたが、彼を手で掴みながらも、怒りや苛立ちのようなものは何も表すことなく、ただ彼の御顔を見つめ続けることしかできなかった。しかし、見よ! 子供らしいムードにあったラーマは、泣き始めたのだ。
母に抱擁されて、彼ら全員は、母に激しく愛撫された。このようにして、至福の権化であり、全世界の歓喜の源であるラーマは、子供としての御姿をとることで、ダシャラタとカウサリヤーを楽しませた。このようにして、彼らは幼年期から少年期までを過ごされたのだった。