ヨーガヴァシシュタ・サーラ 第一章「放棄」(1)
ヨーガヴァシシュタ・サーラ
序文
ヨーガヴァシシュタの原本は32000のサンスクリット語の詩から構成された長編で、聖仙ヴァールミーキーが作者だといわれています。作者については一部の学者の間で見解の相違もありますが、すべての人に認められた最も素晴らしい経典です。
9世紀頃、カシミールのパンディタ・アビンダ・ガウラによって、ヨーガヴァシュシュタから6000の詩を厳選して抜粋した短編集ラグ・ヨーガヴァシシュタが作られました。
その後、ある学者(作者不明)によってヨーガヴァシシュタの中の最高哲学223詩のみを抜粋したこのヨーガヴァシュシュタ・サーラが作られました。
第一章『放棄』
1.シュリー・ガネーシャに礼拝いたします!
時間と空間、すべての限定的属性を超え、無限で、絶対的叡智であり、平安にして光輝であり、みずから発現するものである、至高のブラフマンに礼拝いたします!
2.“私は世俗に束縛されているが、自由になることが決定している”と考え、ブラフマンを知らずとも全く無智でもない者は、この教えを受けるに値する。
3.神の恩寵を頂くまでは、ふさわしい師(サットグル)の助けを得ることや、優れた聖典の正確な理解を得ることは不可能である。
4.おおラーマよ、優秀な水兵によってのみ船による航海が可能となるように、輝ける師に忠実に奉仕することによってのみ、この世界の海原を渡る術を知ることができる。
5.“私は誰か? この世俗の束縛は誰のものか?”――断固たる決意を生むこのような問い掛けは、世俗の長期的疾病を癒す薬である。それは、この世界の幻影を払拭する、正しい識別による観照である。
6.豊かな樹木の涼しい木陰の如き、乾いた魂を癒す解脱の境地を切望する者は、明智の輝きを欠く場所には、一日たりとも留まってはならない。
7.たとえ教えを受けることがなくても、高潔な魂と交わるべきである。彼らの雑談は神秘的な教えと同然であるから。
8.崇高なる者との交わりは、空虚感を治癒する。それは死を不死に変え、苦悩と悲嘆を歓喜と平安に変える。
9.もし神秘的光輝に満ちる崇高なる魂の心が、自身の喜びのために内側の至福に没頭するなら、世俗的苦悩を抱える人々は、いったい誰に保護を求めればよいのか?