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「はかない幻影の歌」

『輝き笑うヴァジュラの歌』

第一章(3)

「はかない幻影の歌」

グル・マルパは、衆生の利益のために妻を持ちました。
しかしわたしには、彼のようにするつもりも能力もありません。
それは、野ウサギがライオンの跳躍を真似るようなものであり、
確実に破滅のふちにまっさかさまに投げ込まれることになるでしょう。

私は、瞑想と帰依の生涯以外には何も望まないという信条を、絶えず持っているのです。
というのは、私はこの俗世に何の喜びも持たないからです。
グルの教えの最も基本は、瞑想に生涯をささげることです。
それゆえ私はこのようにして、グルの道に続きたいのです。

わたしは、瞑想によってのみグルの希望を実現できます。
私はこのようにして、教えの根本に仕え、すべての衆生を益することができるでしょう。
また、父や母を救い、自己の目的も成就できるでしょう。
わたしは、瞑想することしか知らず、それ以外何もできないのです。
それ以外の思いはありません。

その上私は、両親の死や、館や家財の実にひどい荒廃の有様を見てからは、
瞑想への思いを固め、その思いは今胸の中で、炎のように燃えています。

安易な人生は、私と同じように苦しまなかった人々や、
死や地獄のことについて考えない人々には適しているかもしれません。
しかし私の境遇は、私の生きている限り、飢えも貧困も関係なく、世間の目も無視させて、
私を瞑想へと駆り立てるのです。

あなたの御足に礼拝します。
完全なる御方、吉祥なるマルパ!
この托鉢僧が執着から解放されるよう、祝福してください。

ああ、悲しいかな。何という不幸。
俗世の物事に執着する不幸な者たちよ。
彼らのことを思うとき、
わたしは、悲しみに満たされる。

この世のものに溺れることは、まさにその源から不幸を生起させる。
絶え間なく回転しながら、彼らは地獄に落ちるまでぐるぐると、ぐるぐると回る。
カルマが悲哀の心痛をもたらす人々には
真理に帰依することが、あらゆることの最上策。

主、不動の者、御身、究極の真理の保持者よ。
あなたの慈悲に祝福されて、この托鉢僧が隠遁生活をできますように。
このはかない幻影の町に、
遥々やって来た、この旅人は悲しんだ。

私の牧草地は愛らしいかつてクンタンの平原に取り巻かれ
羊の群れが草をはんでいた。
だがいまや悪霊のとりつくところ
これは、はかない幻影の実例。
それは私に瞑想の生涯を求めさせる。

我が家の広間は、
いまやライオンの上あごのよう。
4つの角と、4つの壁と、小塔を持ったわが家は、
今は、ロバの耳のようだ。
これらもまた、はかない幻影の実例。
それは私に瞑想の生涯を求めさせる。

我が家の良き畑には、
今や雑草と芝草が生い茂る。
従兄弟や近所の親戚は、
今や敵となる。
これらもまた、はかない幻影の実例。
それは私に瞑想の生涯を求めさせる。

気高き父はもういず、その痕跡もない。
母は今や砕かれた骨となっている。
これらもまた、はかない幻影の実例。
それは私に瞑想の生涯を求めさせる。

我が家に学芸指南をしてくれた僧は
今や召使いである。
我が家に伝わる聖なる経典は、
今やねずみや小鳥の巣の材料。
これらもまた、はかない幻影の実例。
それは私に瞑想の生涯を求めさせる。

隣人の叔父は、
今や敵の中にいる。
唯一の家族である妹は、
放浪に出て、行方知れず。
これらもまた、はかない幻影の実例。
それは私に瞑想の生涯を求めさせる。

慈悲深く不動なる、御身、尊きマルパよ。
この托鉢僧が、寂静の地に堅く踏みとどまることができるよう、祝福してください。

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