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随筆マハーバーラタ(5)「暴れん坊ビーマ」

 このエピソードでは、ドゥルヨーダナがビーマの暗殺を計画。失敗に終わりますが、この後、ドゥルヨーダナはたびたびパーンドゥ兄弟を陥れ、最終的にクルクシェートラの大戦争へと発展していきます。

 しかしよく考えると、一番最初にその原因を作ったのはビーマだということもいえますね(笑)。少年時代にビーマがドゥルヨーダナや弟たちをいじめたため、ドゥルヨーダナたちはそれをいつまでも根に持っていました。その恨みに、ユディシュティラに王位をとられるのではないかという嫉妬心が重なって、ドゥルヨーダナの悪意はましていったわけです。

 考えてみるとビーマは、いろいろなところでトラブルのもとになっていますね(笑)。後に、パーンドゥ兄弟が変装して潜んでいるのがばれて、ヴィラータ国が侵略されそうになったのも、ビーマが暴れたせいです。またドゥルヨーダナを卑怯ともいえる手段で殺したのもビーマです。また、様々な場面で、ビーマはその豪腕で、(相手が悪人とはいえ)殺害行為を行なっています。
 また、最後のほうで、みんなが優しく扱っていたドリタラーシュトラにきついことを言い、森へ隠退に追い込むのもビーマです。

 平和主義で、お人よしの長男ユディシュティラ。そしてアルジュナとナクラ、サハデーヴァなども、勇者ではありますが、優しい性格のように見えます。その中でビーマだけは暴れん坊で非常に強い性格で、面白いですね。

 ところで、マハーバーラタの続編とも言える「バーガヴァタ・プラーナ」という聖典においては、至高者はこのとき、クリシュナ、アルジュナ、ビーマなどとしてお現われになった、と書いてあります。

 なんと、クリシュナにギーターを説いてもらったアルジュナも、そしてトラブルメーカーのビーマも、実はクリシュナと変わりない、至高者の化身だったというのでしょうか。

 しかしこの「マハーバーラタ」において起きる様々な現象が、すべて至高者の意思だったのだとしたら、ポイントポイントで事件の発端となっているビーマが至高者の化身であるというのもうなずけますね。自ら書いたシナリオをうまく進めるために、至高者は暴れん坊ビーマとしても現われたのです。
 クリシュナの兄のバララーマも至高者の化身であるといいますから、「マハーバーラタ」の中で、至高者は一人何役も演じていたということですね(笑)。

 さて最後に、われわれ自身への教訓として、われわれ自身の人生に眼を向けてみましょう。
 あなたの周りのトラブルメーカー。「あの人のせいで、こんな事件が起きてしまった」という人。それは、「あなたの人生のマハーバーラタ」の中でのビーマかもしれませんよ(笑)。つまり至高者の化身かもしれないということです。
 幸せなことだけではなく、どんなに苦しいことも、不合理と思えることも、すべて神の愛である。――この真実を受け入れるには、相当強い心か、開かれた心か、相当な智慧が必要です。そして何より、神の恩寵が必要です。
 しかしこの真実を受け入れることができた人にとっては、本当に、あなたの人生にとっての敵や加害者や、あなたの心を乱してくれるような存在が、まさに至高者の化身や、至高者から使わされた天使に見えることでしょう。

 こんな話を聞いても、「そんなことは考えられない!」と思う人も多いかもしれません。
 しかし、あなたの人生の中での、嫌いな人、苦手な人、自分を苦しめてくれる人、心を乱してくれる人、こういった人々に対する見解の大きなチェンジ――これは、真の幸福や、悟りを得るための、大きなポイントだと思います。

 すべてが至高者の現われである。
 しかし至高者は、ある部分には強く現われ、ある部分には弱く現われる。
 ある存在が、ある人にとっては普通の人だが、ある人にとっては至高者の強い現われである、ということもある。
 まさにすべては、波立つ水面に反射する、唯一の太陽の光のきらめきの如し。

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