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釈迦牟尼如来(1)

 ヒマラヤの中腹、ルンビニーと呼ばれる地域に、一つの正直な民族がいました。それは『太陽の末裔』と呼ばれるサキャ族でした。

 アシタ仙人はあるとき、清らかに装った神々の群れが、喜びにあふれているのを観ました。
 そこで仙人は、恭しく神々に尋ねました。

『神々の群れがたいそう歓喜しておられるのはなぜでしょうか?
 アスラとの戦いに勝利したときでさえも、こんなにも興奮して毛が逆立つほどの喜び方はされませんでした。一体、どんなすばらしいことがあって、神々は喜び、歌い、楽器を鳴らし、手を打ち、踊っておられるのですか?』

 そこで神々はこう答えました。

『比べるものなきこの世の宝であるかの菩薩が、悟りを求めるお方が、人々の利益のために、この世にお生まれになったのです。ルンビニー地方のサキャ族の村に。だから我々は嬉しくて、しきりに喜んでいるのです。
 このお方は衆生の中の最上者、最高のお方です。彼はやがてイシパタナという名の森で法をお説きになることでしょう。獣達を威圧してほえる猛き獅子のように。』

 それを聞いたアシタ仙人は、急いで天から降りて、サキャ族の王であるスッドーダナの城に赴き、言いました。
『王子はどこにいらっしゃるか。私もお目にかかりたい。』

 まだ生まれたばかりの、スッドーダナ王の息子、シッダッタ王子を見ると、アシタ仙人は大きな歓喜を感じました。
 しかし同時に仙人は、自分の行く末を思って涙を流しました。
 仙人が泣くのを見て、サキャ族の人々は言いました。
『私達の王子の前途に何か障害があるのでしょうか?』

 サキャ族の人々が心配しているのを見て、アシタ仙人は言いました。
『私は王子に不吉な相があるから泣いているのではありません。前途に障害が起こることもないでしょう。この子は並のお方ではありません。注意してあげてください。
 この王子は正覚の頂に達するでしょう。
 このお方は多くの衆生を哀れんで、法輪を転ずるでしょう。彼の清浄行は広く広まるでしょう。
 ところがこの世における私の余命は長くありません。
 私は王子が正覚を得る前に死に、このお方の教えを聞くことができないでしょう。
 それゆえに、私は悲嘆し、苦しんでいるのです。』

 アシタ仙人はこう言って、スッドーダナ王の城から去っていきました。

 その後、アシタ仙人は、自分の甥であるナーラカのもとへ行って、彼にこう告げました。
『もしも将来において、「悟りを得た仏陀が、法の道を歩んでおられる」という話を聞くことがあったなら、お前はそこへ赴いて、教えを尋ね、その世尊のもとで清らかな道を修めよ。』--と。
 

つづく

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