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解説「菩薩の生き方」第八回(1)

2013年9月14日

解説「菩薩の生き方」第八回

【本文】

 まず一行目、誰か頭痛で苦しんでいる人がいたとして、その人に対してある人が、「私はあの人の頭痛を治してあげたい。治そう」と考えただけでも、その人には無量の善福が生じるという。
 これはオーバーな気もしますが、長いスパンで見れば、オーバーでもないかもしれません。つまりそのような小さな善の願いが徐々に増大していき、しまいには多くの善を積み、多くの功徳にあふれた人になっていくでしょうから。
 そしてそれと対比する形で、そのような小さな善の願いですら後には大きな果報を生むのだから、「全ての衆生の苦悩を完全に取り除き、すべての衆生に無量の功徳を得させよう」と決意した菩薩に生ずる功徳は、はかることができないほど大きなものだ、ということですね。

 ここで一つ、菩提心の意味がまた一つはっきりしてきました。
 菩提心とは、「衆生を救うために、私は完全な覚醒を得よう」という勇猛な心ですが、まずその対象は、一切の、すべての衆生であること。
 そして、その「救う」ということの意味が、一時的な喜びや、一時的な苦悩からの解放を与えるだけではなく、完全に苦悩から解放させること。そして無量の功徳を得させること。
 つまりこれは回りくどい言い方になっていますが、全ての衆生を仏陀にするということに他ならないのではないかと思います。
 つまり菩提心とは、「全ての衆生を完全な仏陀にするために、私は完全な仏陀になろう」と決意する心だといってもいいかもしれません。

 はい。まあ、これはいつも言ってることですけどね。菩提心――菩提心っていう言葉は一般にっていうか日本の仏教界やいろんな宗教でもよく使われますね。で、菩提心を持つ者を菩薩って言うわけだけど。しかし、あいまいなかたちで菩提心とか菩薩っていう言葉がよく使われるわけだけど、実際には定義は非常にはっきりとしていますと。
 まず菩薩とは何かといった場合、それは当然、菩提心を持つ者であると。じゃあ菩提心とは何かっていう問題になると。菩提心の定義は、まず簡潔な定義でいうと、「『衆生を救うためにわたしは完全な覚醒を得よう』という勇猛な心」であると。みんなを救うためにわたしは完全な覚醒を得るぞと。じゃあ、ここでその「救う」というのは一体なんなのかと。救うっていうのはもちろんいろんな意味での「救う」があるよね。例えば溺れそうな人を救うと。あるいはお腹が空いてる人に食事をあげるとか、これももちろん救いだし、あるいは一時的な心の苦悩を、まあ例えばなぐさめによって、あるいは真理の法によって安らがせる。これも救うっていうことですよね。あるいはもうちょっとレベルが高くなると、ある人物の煩悩を消滅させ悟りを得させる。あるいはある段階の解脱を得させる。これももちろん救うっていうことになるよね。じゃあどのレベルの救うのなのかっていうと、それは「完全に苦悩から解放させる」、そして「無量の功徳を得させる」。つまり、どのくらいではなくて、パーフェクト。ね(笑)。完全なる、つまり絶対なる境地まで引き上げる。あるいは完全なる幸福を得させる。あるいは功徳っていう意味でいうならば、無量、つまりもう計り知れない完全なる徳を得させる。つまりその魂を魂として完成させると。つまりこれが、「回りくどい言い方」って書いてあるけど、言葉を換えるならば、仏陀にすると。仏教的な言い方をすれば仏陀、つまり如来の境地に至らせると。完成者にさせるっていうことですね。
 はい。そのためにわたしは覚醒を得ようと。つまり相手を完成者にさせるとしたら、当然こっちも完成者じゃなきゃいけない。ね。つまり自分が未熟なのに相手を自分よりも高い境地に引き上げることはできない。よって、わたしはすべての衆生を本当の意味で救いたいと。つまりそれは一時的な救いではなくて、本当の意味で完全なる安らぎ、完全なる幸福、完全なる至福の境地に引き上げたいと。で、そのためにわたし自身が一生懸命頑張ってその仏陀の境地に至ろうと考える心、これが菩提心なんだね。
 だからもう一回言うと、一般によく言う「あの人は菩薩だ」とか、あるいは「わたしは菩提心を持ってる」とか言う場合、その意味をよく考えなきゃいけない。単純に人に優しいとかじゃない。まあ、人に優しい場合、それは愛情深いとは言えるかもしれないね。でもそれは菩提心を持ってるとは言えない。菩提心っていうのは今言ったように、ある意味決意です。決意であって、覚悟ですね。「わたしは必ずみんなを救うんだ」と。で、その救うっていう意味は、みんなを仏陀にするんだと。で、みんなっていうのは当然すべての衆生です。つまりあの人だけとかじゃなくて、この宇宙に生きる全生命体を仏陀にすると。このものすごい決意をすると。で、そのためにはまずわたしが仏陀にならなきゃいけないと。よって、どんなに苦しいことがあっても乗り越えて、必ず早く仏陀になるんだと。この決意ね。これが菩提心だっていうことですね。

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