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解説「ミラレーパの十万歌」第三回(11)

◎八つの煩悩的な風

 有限な思考は、ダルマダートゥの中に溶け、
 八つの煩悩的な風は、希望も恐怖ももたらさない。
 戒と持戒者が消えるとき
 修行は最高に保持される。

 はい。「有限な思考は、ダルマダートゥの中に溶け」――ダルマダートゥっていうのは、悟りの世界、あるいは心の本性の世界です。はい。しかしわれわれが普段、心って言ってるものは、非常に限定されたものです。つまり観念だね、簡単に言うとね。観念によってある枠組み以上を超えることができません。だから、なんていうかな、観念によって限定されてるから、逆に言うとそれによってわれわれは安心してるんです。安心して固定化された世界を見てる。でもこれでは絶対悟れません。この壁をぶち破んないといけないんだね(笑)。でもこれは非常に怖い。
 これ、いつも同じようなこと言ってるけど、なんかの拍子で修行が進んじゃって(笑)、パッってちょっとでも破られると、怖いです、非常に。つまりこの限定された思考がちょっとでも壊れるのはとても怖いんだね。でもそれは壊さなきゃいけない。で、完全にそれが壊れて、最終的にその悟りの心の本性の世界に飛び込んで行かなきゃいけないんだね。
 「八つの煩悩的な風」――これも何回か出てきてるけど、簡単に言うとね、ちょっと実質的な言い方をするけども――何かを得たらいいなっていう気持ち、あるいは何かを失いたくないなっていう恐怖、ね、あるいは楽に対する希望、それから苦しみたくないなっていう恐怖。で、同じような感じで、称賛されたい、非難されたくない、あるいはいい言葉を聞きたい、嫌な言葉を聞きたくない。で、これで八つなんだけど、実際はこの八つだけじゃなくて、すべてにおいてそうだね。こうなりたいっていう希望、こうなりたくないっていう恐怖、これがここにある「八つの現世的風」っていうやつです。しかしこれも限定的な世界なんだね。つまりわれわれが「こうなったらいいのだ、こうなるのは嫌なのだ」っていう限定した壁を心につくってるから、この小さな小さな世界の中で苦しんでいる。いつも言うように、まさに自作自演です。自分で勝手に「こうなったら幸福ね。こうなったら不幸ね」って自分で勝手に決めてて、「あ、こうなった。うわー」とかやってる。だからゲームみたいなもんだね。しかしそれが打ち破られたとき、心の本性、つまり本来希望もなく恐怖もない純粋な世界に溶け込むんだよっていうことですね。

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