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要約・ラーマクリシュナの生涯(18)「ヴェーダーンタの修行」①

18 ヴェーダーンタの修行

◎トータープリーの到来

 修行者トーターは、聖河ナルマダーのほとりで、たった一人で非常に長い間、修行に没頭した。そしてついにニルヴィカルパ・サマーディの境地に到達し、ブラフマンの叡智を得たのだった。
 ブラフマンを悟った者たちは、瞑想でサマーディに入ったとき以外のすべてのときにも全宇宙をマーヤーとして眺めつつ、寺院や聖者や聖地を訪れて、それらの中にブラフマンを感得する。トーターも、ブラフマンを悟った後、気の向くままにインドを放浪し、様々な寺院や聖地を訪れていた。
 そしてあるときトーターは、ガンガーサーガル(ガンガーが海に流れいるところ)とプリーを訪れた帰りに、ドッキネッショルにやってきた。一カ所に三日以上はとどまらないのが彼の習慣だったので、最初はトーターは、ここにも三日間だけ滞在するつもりで、カーリー寺院にやってきた。このときはまだトーターは、母なる神が、ゴダドルにヴェーダーンタの修行をさせるため、そしてトーター自身の叡智を完成させるために、トーターをここに呼んだのだということを知らなかったのである。

 カーリー寺院に着いたトータープリーは、そこで放心状態で座るゴダドルの姿を見た。このときすでにあらゆるバクティの境地を完成させていたゴダドルの顔は、輝きを放ち、信仰の感動を放射していた。
 トーターはそれを見て、彼が普通の人物でないことを感じ、好奇心と驚きに満たされつつ、ゴダドルに近づいていった。そしてこう言った。

「あなたは非常に良い素質を持っているようだ。ヴェーダーンタの修行をする気がありますか?」

 ゴダドルは、不意に自分に話しかけてきたこの背の高い裸の行者に答えてこう言った。

「私は自分が何をすべきか、何をすべきでないか、全く知らないのです。私の母が何もかも知っておいでです。私は彼女の命令の通りにします。」

 トーターは言った。

「では、行ってお母さんに尋ねておいでなさい。私はここに長くはとどまっていられないのだ。」

 そこでゴダドルは、母なる神の聖堂へと行き、法悦状態に入ると、このような言葉を聞いた。

「行って学ぶがよい。あの僧がここに来たのは、お前に教えるためなのだよ。」

 神聖な半意識状態で歓喜に顔を輝かせながら、ゴダドルはトータープリーのところに戻って来て、母の指示を伝えた。
 トーターは最初、ゴダドルが本当のお母さんに尋ねに行ったのだと思っていたが、そうではなく寺院のカーリー女神の像を「母」と呼んでいるのだと気づき、その純朴さに魅力を感じはしたけれども、同時にそれは無智と迷信から来る劣った状態だと考え、哀れみの心が生じた。非二元のブラフマンの境地を最高と考えていた彼は、人格神信仰などのバクティの価値を認めていなかったのである。

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