要約「シクシャー・サムッチャヤ」(22)「制戒の遵守」
◎制戒の遵守
「勝者(ブッダ)が定めた掟を軽んじ、それを実践しない愚か者は、地獄で煮られる。」
よって、謹んで、ブッダの定めた教戒を軽視することなかれ。
宝雲経に、制戒の本質がこのように説かれている。
「人の浄信を壊すもの、それを努めて避けるべし。」
「ブッダが定めた基本的な教戒でさえこのようであるのだから、いわんや菩薩の教戒を守ることの重要性は、いわずもがなである。
ゆえに菩薩は、行ってはいけない場所には行かず、語っていけない言葉は語らない。時を知り、条件を知って、なすべきことをなすのである。
もしそのようにしなければ、自分の浄信を守ることはできず、ましてや衆生に浄信を起こすことなどできるはずがない。
行動するときも、止まっているときも、座っているときも、寝ているときも、常に覚醒を求め、なすべきことを完全に具足して、心は喜びに満ち、心身は楽に満ち、整えられて柔軟であれ。ここにおいてとらわれの心はない。」
また、法集経にはこのように説かれている。
「もし菩薩が禁戒を守るなら、それはもろもろの衆生を守ることになる。ゆえに、戒を破ることを恐れるべし。
衆生を守る者は、異性の部屋で、異性と二人きりになるなかれ。
神々と人間たちを守る者は、人々が使用している水場や土地などに、大小便をしたり、唾を吐いたりするなかれ。」
◎言葉を慎む
菩薩は自らの行動を守護し、そして悪しき言葉を捨てるべし。
海意経には、こう説かれている。
「弱弱しい言葉を言うなかれ。
不実な言葉を言うなかれ。
むさぼりの言葉を言うなかれ。
卑下する言葉を言うなかれ。
下劣な言葉を言うなかれ。
ごまかしの言葉を言うなかれ。
嫌悪の言葉を言うなかれ。
相手を害する言葉を言うなかれ。
乱れた言葉を言うなかれ。
闘争の言葉を言うなかれ。」
また、如来秘密経には、こう説かれている。
「菩薩は、愛著の言葉を言うなかれ。
乱暴な言葉を言うなかれ。
迷妄の言葉を言うなかれ。
汚染された言葉を言うなかれ。
自分を高く見せたり強く見せたりする言葉を言うなかれ。
人を仲たがいさせる言葉を言うなかれ。
自己の手柄を称賛する言葉を言うなかれ。
他者の手柄を批判する言葉を言うなかれ。
慢心の言葉を言うなかれ。」
また、十地経には、こう説かれている。
「自らの仲間を喜ばせ、その他の者を害するような言葉は断ずべし。
柔軟で、心を喜ばせる、適切なる、美しく素晴らしい、心に響く、楽しい、分別のある、多くの人が歓喜する、すべての衆生を利益し安楽にする、すべての衆生を意気勇躍させる、一切の愛著・嫌悪・迷妄を滅する、そのような言葉を語るべし。
もしこのような言葉を発し、そしてそれを回向するならば、そこには喜びと笑顔がある。すべての損害を取り除くが故に。」
また、法集経には、このように説かれている。
「菩薩は、他者の心に嫌悪を生じさせる言葉を語るなかれ。
他者の心に悩みを生じさせる言葉を語るなかれ。
他者の心に迷妄を生じさせる言葉を語るなかれ。
他者に無益な言葉を語るなかれ。
他者の心に無明を生じさせる言葉を語るなかれ。
衆生の心に歓喜を生じさせない言葉を語るなかれ。」
よく自己の行ないを守る者は、他者を悩まさず、またそのような人のことは他者も害することがない。
故に、常に次のような心を保持すべし。
「安楽・寂静・不動にして、慚愧の心を持ち、他者に対して寂静なり。正しい心を常に保ち、衆生に対して自在なり。浄信等は、無常にして常に変化する。ゆえに努力して自己の心を守るべし。」