修行者ラーマの物語
あるとき、ラーマという名の修行者が、プレーマーナンダというグルのもとに出家しました。
しかしラーマの心は真理と世俗の間で常に激しく揺れ続け、一ヶ月ほど経った頃、ついにグルに、一時的に現世に帰らせてくれるようにと懇願しました。グルはそれを許し、「10年経ったら戻ってきなさい」と言いました。ラーマは必ず戻ってくると約束しました。
こうしてラーマは実家に帰り、世俗の仕事をし、結婚し、子供もでき、家庭生活を営みました。しかし心の中では常にグルに仕えていたので、グルの祝福によって生活も安定し、裕福になり、家庭生活もうまくいき、世俗の喜びを享受していました。
こうして10年が経った頃、ある汚い托鉢僧が、ラーマの家の玄関にやってきました。立派な家の前に立つ小汚い男を見て、ラーマの妻は激しくののしりました。それでも托鉢僧は帰らずに、ご主人にお会いしたい、と言いました。
玄関に出てきたラーマは、それがグル・プレーマーナンダであるとすぐにわかり、畏敬の念をもって挨拶をしました。
グルは言いました。
「さあラーマ、10年が過ぎ去りましたよ。自分の欲望を満足させることができましたか?」
ラーマは答えました。
「グルよ。私はあなたの恩寵により、すべての世俗の喜びを楽しみました。今、再び出家生活に戻ることもできるのですが、しかしどうしてこの小さな子供たちを放っていけるでしょうか。どうかあと数年、ここにとどまることをお許しください。子供たちを教育し、生活できるようになるのを見届けてから、あなたのもとに戻ります。」
こうしてさらに十数年が経ち、プレーマーナンダが再びラーマの家を訪ねると、年老いて衰えた姿のラーマが出てきました。彼の妻はすでに他界し、息子たちは成長して結婚し、自分の家庭を持っていました。
出家生活に戻るように促すグルに対して、ラーマは言いました。
「敬愛するグルよ! 私は世俗の義務を果たしたのは事実です。子供たちは皆成人し、豊かな生活を送っています。それでも彼らはまだ若い。世間の楽しみに夢中です。彼らを放っておいたら、私が汗水流して得た富を浪費しつくし、飢えてしまうに違いありません。家族の財政計画を立て、彼らを導かねばなりませんので、あと数年、ここにいることをお許しください。子供たちが十分に成人し、家族の責任が持てるようになったら、私は出家生活に戻ります。」
こうしてさらに七年が経った頃、プレーマーナンダがラーマの家に行ってみると、家の前で大きな犬が門番をしていました。プレーマーナンダは、それがラーマの生まれ変わりであることに気づきました。ラーマは数年前に亡くなり、家族と自分の富への執着によって犬に生まれ変わり、家と子供たちを守っているのでした。
プレーマーナンダは犬に向かって言いました。
「さあ、愛する弟子よ。今なら私についてこられるだろう。」
しかし、犬になったラーマは答えました。
「グルよ、私の子供たちは今、幸福と繁栄の絶頂にありますが、子供たちに嫉妬する数人の敵がいるのです。あと2、3年すれば、その恐れと心配はなくなるでしょう。そうしたら私は出家生活に戻ります。」
さらに十数年が過ぎた頃、プレーマーナンダがラーマの家に行くと、犬もまた死んでいました。プレーマーナンダは神通力によって、ラーマがコブラに生まれ変わり、家の金庫を守っているのを知りました。弟子を幻影から救い出すときが来たと知ったプレーマーナンダは、ラーマの孫に向かって言いました。
「あなたの家の金庫の近くに、猛毒を持ったコブラがいます。そこからそのコブラを追い出しなさい。しかし殺してはいけません。うまく背中をたたきつぶして、私のもとに持ってきなさい。」
ラーマの孫が見に行くと、本当にコブラがいたので驚きました。彼はコブラを殺さない程度に打ちのめして、プレーマーナンダのもとへと持ってきました。
プレーマーナンダは、コブラの頭を愛おしそうになでると、自分の首に巻き付けて、ラーマの孫たちに別れを告げて出て行きました。孫たちも、聖者のおかげで自分たちがコブラから救われたと考えて、とても幸せでした。
道すがら、プレーマーナンダはコブラに話しかけました。
「愛しいラーマよ。いかなる世俗的喜びも、心を満たすことはできないのだよ。欲望は尽きないもの。一つが消えるまえに数限りない欲望がわき出てくる。正しい識別智のみが、唯一の非難処になるのだよ。目覚めなさい! 少なくとも次の生では、至高者のもとにたどり着きなさい。」
「グルデーヴァ!」
ラーマは激しく泣きました。
「あなたは本当になんとお優しいのでしょう。私がこんなに恩知らずだったにもかかわらず、私を見捨てることがありませんでした。そして、私をあなたの御足のもとに戻れるようにお導きくださいました。
本当に、グルのように気高い愛に満ちているお方は、他に見つけることができません。世界中どこを見ても、真のグルと弟子の関係以外は、みな利己愛ばかりです。」