何を心配しましょう
ある朝、コーサラ国のバンドゥラ将軍の婦人であるマッリカーは、サーリプッタを初めとするお釈迦様の弟子たちを、朝食の供養に招待しました。
そしてその供養の宴が始まる直前、マッリカーのもとに、一通の手紙が届きました。そこにはなんと、彼女の夫であるバンドゥラ将軍が、32人の子供たちと一緒に、首を切られたという知らせが書いてあったのです。
しかしマッリカーは、誰にも何も言わずに、その手紙を懐にしまうと、予定通りに修行者達をもてなす供養の会を始めました。
その供養の席にて、修行者達の食事が進み、ヨーグルトが振る舞われる段になったとき、ある召使いが、誤ってヨーグルトの容器を割ってしまいました。
それを見たサーリプッタは、マッリカーに対して言いました。
「壊れるものは壊れる。気になさるな。」
するとマッリカーは、懐から例の手紙を取り出して、サーリプッタにこう言いました。
「尊者よ。32人の子供たちと共にわたしの夫が首を切られたというこの手紙が、今朝、わたしのところに届きました。私はこれを聞いてさえも、思いあぐみません。ヨーグルトの容器が壊れたからといって、何を心配しましょう。」