仏教修行者の基礎(2)「ニルヴァーナに入ることができる条件」
◎ニルヴァーナに入ることができる条件
1.すぐれた条件
師が正しく教えを説いてくれることと、弟子がそれを正しく思惟することである。
2.基礎的条件
ニルヴァーナに入るための基礎的条件には、多くのものがある。
(1)内的円満
①人間の身体を得ること
②真理の教えが存在する国に生まれること
③愚鈍ではなく、正常な感覚器官を有していること
④如来の教えに対する信を持つこと
⑤五逆の罪(父を殺す、母を殺す、聖者を殺す、ブッダの身体から血を流す、聖なる教団を分裂させる)を犯していないこと
(2)外的円満
①仏陀がこの世に生まれたこと
②仏陀が教えを説かれたこと
③仏陀がこの世を去られた後も、正法が失われず伝えられてきたこと
④正法を証得した正しい師が、教えを教授してくれること
⑤在家の信者たちが、衣服や飲食などを布施すること
(3)善法の決意
例えばある者が、聖者から教えを聞いて、浄信を得る。そしてこう思う。
「在家の生活はわずらわしく、激痛があり、塵垢にまみれている。出家の生活は広大である。よって私は、妻子・親族と財物などのすべてを捨てて、善く説かれた法と律とにおいて、まさしく家を出て出家しよう。そして正しい修行に励もう。」
と。このような決意を持つことが、善法の決意と呼ばれる。
(4)正しく出家すること
(5)戒を守り、微小な罪を破ることも恐れること
(6)感覚器官の制御
戒を正しく守ることによって、正念が守護され、正念によって心は守護され、平等心をもって生活する。その者は感覚器官を制御することで、感覚器官で対象を認識しても、その相をとらえない。
(7)正しい思いで食をとる
正しい思いによって食事をとる。楽しみのためではなく、執着のためではなく、美容のためではなく、ただ身体を保つために、修行のために食をとる。
「私は過去の味覚の幻影を断ずる。そして新たな味覚の幻影を生じさせない。そのようにして食事をとることによって、力と安楽と安穏に住することができるだろう」
と考えながら食をとる。
(8)初夜と後夜に覚醒してヨーガを修習する
その者は、昼間は経行と瞑想を行なうことによって、もろもろの障害から心を浄化する。
そして夜を三等分した最初の三分の一の時間帯に、また経行と瞑想を行なうことによって、もろもろの障害から心を浄化する。
それから両足を洗い、右脇を下にして足を重ねて、ライオンのごとくに床に臥す。そして光明の想を持ち、正念正智して眠る。
夜の最後の三分の一の時間に速やかに目覚め、経行と瞑想を行なうことによって、もろもろの障害から心を浄化する。
(9)正智して生活する
常に正智をしながら生活する。行き来するとき、見るとき、身体を動かすとき、何かを持つとき、食べるとき、飲むとき、睡眠するとき、座るとき、語るとき、沈黙するとき、常に正智しつつ行なう。
(10)遠離を楽しむ
安楽なベッドや座具を遠ざけ、森林、樹下、山、谷、洞穴、荒野などを座臥所とする。
(11)もろもろの障害から離れる
五つの障害(愛欲・嫌悪・こん枕睡眠・じょう挙悪作・疑念)から心を清浄にする。
(12)サマーディに安住する
五つの障害を離れ、もろもろの煩悩を断じて、四つのサマーディに安住する。
もろもろの欲と悪不善の法を遠離し、有尋有伺である、喜と楽を伴った第一静慮を具足して安住する。
心の働きを止め、内心の清浄と精神統一により、喜と楽を伴った第二静慮を具足して安住する。
喜から離れ、捨に安住し、正念正智し、楽に住するところの第三静慮を具足して安住する。
苦と楽、喜と憂といった二元を断じ、捨と正念の清浄なる第四静慮を具足して安住する。
以上のすべての「基礎的条件」をそなえ、心が清浄となり、もろもろのけがれがなくなり、不動を得た者が、師から正しい教えを聞き、正しく思惟するならば、正しい見解が生じ、四つの聖なる真理を現観し、解脱を完成し、完全なニルヴァーナに入る。
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