ヴァイラーギャ・マーラー(放棄の花輪)(2)
10歳のときに眼鏡を身に着ける。
腕時計を身に着ける。
借金をして車を買う。
お洒落な晩餐会の制服を着てエルウッドの帽子をかぶり、衛生的なブーツを履く。
髪形をフレンチクロップやボブカットにしたり、スリーキャッスル・シガレッツ、ネイビーカット、あるいはマニラ・シガーズを吸う。
堅いカラーで首を絞めつける。
手を握って女性と一緒にビーチを歩く。
ポケットには新聞を入れる。
上唇の上にきれいに整ったひげ、つまり皇帝の口ひげがある。
肉を食べ、ブランデーを飲む。
ブリッジで遊ぶ。
ギャンブルをする。
舞踏会で踊る。
映画に行くために金を借りる――
要するに浪費の人生に導くこと――これが現代文明である!
ファッションと流行は、あなたを乞食の中の乞食にしてしまった。
一方からはサソリが針を刺し、また別の方向から蝿、蜂、蚊や棘があなたを煩わせる。夏には太陽があなたを焦がし、身を切るような冬はあなたの血液を凍らせる。インフルエンザ、伝染病、ハンセン病、流行り病、虫垂炎、歯槽膿漏症、天然痘は、いつでもあなたを悩ませる。恐怖、妄想、苦悩、悲しみ、不幸は、一瞬一瞬あなたを殺している。
欲望、怒り、嫉妬、心配、不安、心痛、興奮は、一瞬一瞬あなたをひどく苦しめる。あなたが最も愛した人の死は、あなたに激しいショックを与える。
それにもかかわらず、あなたはこの非実在である俗世の生活の感覚のつかの間の喜びを決して放棄しない。
それが、肉体的感覚の喜びの理解しがたいところである!
あなたは誇らしげにこう話すだろう。
「おお、わたしは力強い男だ。わたしはとても賢くて知性的だ。わたしは何でもできる。神など存在しない。」
おお、愚か者よ! あなたが口ひげをひねっているとき、突然サソリに刺されたとする――そのときあなたは痛烈に「おお、ナーラーヤナよ、わたしをお助けください!」と叫ぶのだろう。
もし髪が白髪になるなら、あなたは若返りのために“猿の皮膚の移植”を考案するだろう。もし歯が抜け落ちるなら、あなたは入れ歯を一式入れるのだろう。あなたは決して“生きて楽しもうという意志”を手放しはしない。
なんと希望のないやつだ!
自分の状態を少し、内省してみなさい。
子宮の中の胎児のときは、尿と汚物に覆われ、空腹の炎によって焦がされる。大人になると、感覚の対象物や妻などの楽しみにのぼせ上がる。もうろくした老人になると、肉体と知性は極度に弱くなる。
迷妄の人生は、女の中にある。
あなたの哀れな定めの中に、金と感覚の対象物がある。
人生は儚い。死は今にもとびかかろうとしている毒蛇のように、あなたに絶え間なく確実に迫っている。
悲惨な病はこの肉体に大変な大破壊を引き起こす。
若さはすぐに肉体から去り、老いはそれをしっかりとつかむ。
人生のスマム・ボーナム(最高善)を得ようと、大急ぎでこの貴重な人生を活用しようとする者――彼のみが救われる。
偉大な手品師であるマーヤーは、骨格を組み立て、それを肉で覆い、つるつるの皮膚をかぶせて、さまざまな不浄物を隠す。
おお、欺かれし者よ! いつまでこの肉体を自分のものと見なすのか? この欺かれた空想を諦めなさい。あなたの実在の本質――サチダーナンダ・スワルーパを、あなた自身と同一視しなさい。
「わが子は腸チフスに苦しんでいる。次女は結婚しようとしている。わたしには多くの借金がある。妻は高級なネックレスを買いたいと言ってわたしを悩ませている。義理の長男は最近死んでしまった。」
――あなたはこんなことを言うのにもう疲れ果てているのではないか?
実にそのような不幸な出来事は、少なくとも今度こそは、人生の崇高な目的を果たすために、あなたの目を開くものとならねばならない。
人間の愛はうわべだけのものである。
人間の愛は単なる動物的愛である。
人間の愛は単なる愛着である。
人間の愛は性的な愛である。
人間の愛は利己的な愛である。
人間の愛は常に変化する。
人間の愛はすべて偽善であって、全くの見せ掛けである。
親愛なる者よ!
あなたは、実在である神への永続する愛、そして神のみを見出すことができるのだよ。「彼」の愛は変わることがない。
友よ、教えてくれ。
あなたはいつまで儚い世俗的な物事の奴隷であるのだろうか?
あなたはいつまで同じ感覚の楽しみを繰り返すのだろうか?
あなたはいつまで富と女を崇めたいと思うのだろうか?
いつあなたは主を瞑想し、善行を為すのだろうか?
考えなさい、熟考しなさい。
どんなことであれ、本当にこの世に楽しみや幸福があるのだろうか?
なぜあなたはそれら世俗の物事に執着しているのか?
なぜあなたは野良犬のように、この地上であちらこちらと幸福を探しまわるのか?
内側を探しなさい。
内側を見なさい。
そして内省し、今すぐに平安と不滅の至高なる住居で休息しなさい。
決して、一秒も遅れを取ってはならない。
地道に進んで行きなさい。
前進せよ。
今すぐに悟り、そして自由になるのだ。
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