ラームチャンドラ・ダッタの生涯(5)
シュリー・ラーマクリシュナの信者達は、幾度も自宅で祭典を企画しては、師と信者達を招待した。これらの集まりで、師は神について語り、忘我の状態で歌い踊り、家中が強烈な霊的雰囲気に満たされた。一般に、祭礼の出費はすべて主催者が負担し、それには師の馬車賃と、ときには音楽家への出演料も含まれた。
ところで、ラームはけちで知られていた。彼は、祭りを主催することに関する経費を計算して、ためらった。しかしシュリー・ラーマクリシュナが彼の家を訪問する日取りを決められると、心を入れ替えて、喜んで必要なものを手配し始めた。
一八八三年六月二日土曜日、ベンガル歴バイシャーカ月の満月の日に、シュリー・ラーマクリシュナはラームの家にやってこられた。この機会に大変な祝福を感じたラームは、その後、吉祥の日には毎年祝祭を手配するようになった。
そしてラームは師を自宅に幾度も招待し、他の信者が師を自宅に招くときには事前にラームに相談するほど、祭典の実行におけるエキスパートとなった。
師はラームの守銭奴的な性質をゆっくりと根絶やしになさり、彼を物惜しみしない信者になさったのだった。
シュリー・ラーマクリシュナがラームの自宅を初めて訪問した翌日、ラームはドッキネッショルに出向き、師から様々な霊的な指示を授かった。
午後十時にラームは師のもとを辞し、部屋の外に出た。空は暗く曇っていた。ベランダで彼がじっとしていると、師が自室から出てこられたのに気が付いた。
シュリー・ラーマクリシュナは、突然ラームに近付いてこられ、「さて、望みは何かね?」と彼にお尋ねになった。ラームはすっかり驚いてしまった。彼は、全身に電気が充満したかのように感じた。シュリー・ラーマクリシュナがカルパタル(願望成就の樹)のように、彼のいかなる望みでもかなえようと前に立っておられたのに、彼は師に何をお願いしたらよいのか分からず途方に暮れた。彼は、シュリー・ラーマクリシュナの巨大な霊性を面前にして、富や神通力を頼もうとすることが、いかに取るに足らないことであるかを知った。
ついに、感情に圧倒されて、ラームはこう答えた。
「主よ、わたしは何を望めばよいのかわかりません。あなたの御決定に委ねます。」
「わたしが夢で与えたマントラを返しなさい。」
シュリー・ラーマクリシュナはサマーディに入りながらそう仰った。
直ちにラームは師の前に平れ伏し、心の中でマントラを花のように彼の御足に捧げた。シュリー・ラーマクリシュナが右足でラームの頭に触れられると、ラームもまた外界の意識を失った。彼は、二人がどれほどの時間その状態にあったのかわからなかった。徐々に師は通常の意識を取り戻され、足をどけられた。ラームは立ち上がった。すると師はラームにこう仰った。
「もし見たいものがあるならば、わたしを見なさい。」
そしてラームは、シュリー・ラーマクリシュナがラームの最愛の神の御姿、彼の理想神の御姿を取っておられるのを見たのだった。
それからシュリー・ラーマクリシュナは彼にこう語られた。
「これ以上霊性の修行を行なう必要はないよ。時々わたしに会いにここに来るだけでよい。そして土産に一パイサ程度のものを持ってきなさい。」
この後、ラームは不安からすっかり解放された。加えてこの体験が、シュリー・ラーマクリシュナは神の化身であると彼に確信させた。
あるときドッキネッショルで、喜びに溢れたラームは、偉大な信者であったギリシュ・チャンドラ・ゴーシュに、彼の信仰を表明した。
「あなたは理解していますか、兄弟ギリシュよ。この度は、シュリー・チャイタニヤ、ニティヤーナンダ、そしてアドワイタの三人は皆、シュリー・ラーマクリシュナとして一つのお姿になっておいでなのです。愛、信仰、そして智慧は、この現在の化身の内に等しく顕現されたのです。」
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