プラジュニャー
プラジュニャーは、超越した智慧、つまりすべてを見る完全で正確な智慧を意味する。【これ】と【あれ】の上に固定された意識は切り払われ、そこから二層の智慧が生まれる。【知るプラジュニャー】と【見るプラジュニャー】だ。
【知るプラジュニャー】は感情に取り組む。それは矛盾した感情、つまり自分自身に対して持っている一定の態度を切り払う。それによって、あるがままの自分をあらわにするのだ。
【見るプラジュニャー】は、世界に対する幼稚な先入観を超越する。それは状況をあるがままに見ることだ。【見るプラジュニャー】によって、わたしたちは可能な限りバランスの取れたやり方で状況に取り組むことができるだけの余裕を持つ。
プラジュニャーは、【これ】と【あれ】を区別する傾向を持つどのような認識をも完全に切り払う。だからこそそれは両刃の剣なのだ。それは【こちら】の方向だけでなく【あちら】の方向にも切り込むのだ。菩薩はもう【これ】と【あれ】を差別することからくるいらだちの感覚を経験することはない。背後をいちいちチェックする必要もなく、彼はただ風に乗って状況の海を渡る。
――チョギャム・トゥルンパ