パドマビノデ
パドマビノデはMの学校の生徒で、シュリー・ラーマクリシュナの生前に師を訪れ、その祝福を受けていた。
師が肉体を去った後、劇団に加わった彼は、アルコール中毒になってしまった。夜遅く劇場から帰る道すがら、酔った勢いのパドマビノデは支離滅裂なことをしゃべった。ウドボーダンのそばを通りかかるとよく「友」を呼び求めた。しかしホーリーマザーの眠りを妨げられたくなかった住人たちは、これに応えないように指示を受けていた。ある夜、自分の呼び声に誰も応えてくれなかったので、もの悲しい声で歌い始めた。
お母さん、お目覚めください。扉を開けてください。
闇の中で道が見つかりません。
わたしの心はおびえています。
幾度あなたの御名を呼び求めたことでしょう。
それになのに、情け深いお母さん、
今日のあなたは何とつれないことでしょう!
お部屋でぐっすり眠っていらっしゃる、
哀れな我が子をたった一人外に置き去りにされて。
泣き疲れて骨と皮になってしまったこのわたし、
お母さん、ああ、お母さん!
どんなに正しい音色、音調、音階で歌っても
声の限りに叫んでも
それでもなお眠っていらっしゃる。
わたしが芝居にうつつを抜かしていたので
わたしを遠ざけておられるのですか。
お願いですから、わたしを見つめてください。
そすうればもう遊びに行ったりしませんから。
あなたを離れて誰のもとに走りましょう。
こんな手に負えない子供の重荷に耐えてくださるのは
お母さん、あなただけ。
パドマビノデが通りで魂を込めて歌うと、マザーの部屋の窓の鎧戸が開いた。これを見た彼は非常に満足して言った。
「お母さん、お目覚めになられましたね。息子の祈りを聞かれましたか。お目覚めなのですから、どうぞわたしのご挨拶をお受けください。」
彼は地にまろび伏して、その塵を額にいただいた。そして再び歌った。
愛しい母なるシャーマ、
おお、心の内に愛でよ。
あなたとわたしだけが『彼女』を見る。
誰にも邪魔はさせない。
信者がマザーの安眠妨害に触れて不平をもらすと、「あのように呼びかけられては、自分を抑えることはできません」とマザーは答えられた。
数日後、パドマビノデは重病となり、病院に運ばれた。死の床にあった彼は、『ラーマクリシュナの福音』から何か聴きたいと言った。聞きながら涙が頬を伝わった。師の御名を唱えながら、最後の息を引き取った。これを聞かれたマザーは言われた。
「そうでなくてはなりません。確かにあの子は師の子供だったのです。確かに泥にまみれていました。それでも今は自分が帰るべき師のかいなに抱かれているのです。」