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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(92)

◎パトゥル、特別な客人を歓迎する

 あるときパトゥルは、彼の野営地で暮らしている人々に、その日に非常に大切な客人が到着するのを楽しみにしていると言った。そして皆に、その特別な客人のために準備をして、一点の汚れもないほど周りを綺麗にするように頼んだ。皆はその指示を受けて、一生懸命に働いた。

 午後、ある人がパトゥルの野営地にやって来た。その訪問者とは、体をぼろ布で覆った粗野な乞食であった。この放浪者は、かなり風変りな首輪を首にかけていた。――その首輪とは、汚くてボロボロのブーツの靴底を紐でつなげて作ったものであった。
 パトゥルはすぐに、その風変りな乞食に向かって五体投地をし始めた。そして躊躇うことなく、その不潔な客人の不潔な足に恭しく頭をつけた。
 誰も言葉を発する者はいなかった。皆がものが言えないほどびっくりしていた。パトゥルに続いてこの浮浪者に敬意を払うものは一人としていなかった。まして、五体投地をする者においておや。
 丁寧なしぐさで、パトゥルはその乞食をメインのテントの中に案内し、弟子たちにはそのテントの中に入ってくることを禁じて、入口を閉めた。
 中からは、パトゥルがガナチャクラと呼ばれる秘密の宴供養の儀式を行なっている声が聞こえてきた。そして次に、パドマサンバヴァへの祈りを唱える声が聞こえてきた。

 フーム! ダーキニーの大群と共に現われたまえ、パドマサンバヴァよ
 われわれのことを思いたまえ、すべての時、すべての方角のスガタよ
 偉大なる立派な導き手、パドマ・トーテン・ツァルよ
 さあ、ヴィディヤーダラとダーキニーの世界から来たれよ!

 そのとき、信じられないほど甘いお香のような香りがテントの外に漂い始めた。
 ここで、数人の僧は好奇心を抑えることができなくなり、テントの横の垂れ幕を開け、中を覗いてしまった。
 彼らが見たものは、ショッキングなものだった。テントの中で、パトゥルはガナチャクラの儀式を行なっていたのだが、見知らぬ乞食が一人ではなくて、八人に増えていたのだ!
 ガナチャクラが終わると、パトゥルはテントから出てきた。そして例の浮浪者もパトゥルと共に現われた。――一人で。ブーツの靴底で作った独特な首飾りをつけて。
 パトゥルはその普通ではない訪問者に、恭しく、近くの山道までずっと付き添っていった。そしてそこから、その乞食は独りで道を歩いていった。
 パトゥルが戻ってくると、弟子たちはあの”普通ではない訪問者”について質問した。パトゥルは答えた。

「いやしくも、おまえたちがあの御方にお目にかかれたということは、おまえたちに良いカルマがあったからに違いない。おまえたちは彼にお目にかかれたが、彼をただの乞食とみなしてしまったのは、おまえたちに悪しきカルマがあったからに違いない。
 あれは、ドルジェ・トロ(パドマサンバヴァの八つの顕現の一つ)ご自身だ!」

  そしてパトゥルはすぐに付け足してこう言った。

「パドマサンバヴァのその他の変化身も来られた。すべての変化身がやって来られたのだ!」 

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