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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(80)

◎パトゥルが畏敬の念を抱く

 あるときパトゥルはカルチュン・コルモ・オルで、小さなヤクの毛のテントを張って暮らしていた。パトゥルの忠実な従者であるソナム・ツェリンも、その近くでテントを張って暮らしていた。
 その当時、ラマ・ミパムが、現代も有名な「ニンマの教えが繁栄し、ダルマの王たちを喜ばせるための熱烈な祈り」を書き終えた。これは瞬く間に広まった。ミパムは、この新たな祈りをパトゥルに見てもらい、パトゥルの意見を聞きたいと思っていた。
 ラマ・ミパムは、カルチュン・コルモ・オルから徒歩で約半日かかる場所にあるジュニオン僧院で長い間暮らしていた。
 夕方近くにミパムはカルチュン・コルモ・オルに到着し、まず最初にパトゥルの従者であるソナム・ツェリンのテントを訪ねた。ソナム・ツェリンはラマ・ミパムに、「今日はもうテントに戻られたので、訪問者を受け入れておりません」と言った。
 ラマ・ミパムは、手書きのテキストを従者ソナムに渡して、こう言った。

「今晩、この祈りの詩に目を通してください。そして明日の朝一番に、パトゥル・リンポチェにお茶を給仕する際、パトゥル・リンポチェに向かって、この祈りを声に出して読んでください。」

 その夜、ソナム・ツェリンはラマ・ミパムの手書きのテキストを正確に読めるかどうか不安になって、何度も何度も読む練習をした。
 翌日、朝一番に、祈りが書かれたテキストを上着の間にしまい込んでから、ソナム・ツェリンはお茶の給仕をするためにパトゥル・リンポチェのもとへ行った。パトゥルは服を着ている最中であった。パトゥルが白いフェルトのコートを着て、非常に長い羊毛の帯を何周か腰に巻き付けて縛ろうとしていたときだった。彼はソナム・ツェリンに言った。

「昨晩、あんなに長い時間何を唱えていたのだ?」

「今日の朝一番に、あなたに唱えるようにラマ・ミパムから頼まれていた祈りの詩を読んでおりました。」

 半分くらい帯を巻き終わったところで、パトゥルは手を止め、こう言った。

「なに、そうなのか。唱えてくれ!」

 ソナム・ツェリンはラマ・ミパムの祈りを唱え、パトゥルはそのまま立ちながら、両手で長い帯の端を握りながら、じっくりと聞いた。
 半分唱え終わったところで、パトゥルは帯の両端を掴んだまま、胸の前で両手を合わせ、「おお………おお!」と言って驚嘆していた。

「なんと素晴らしい! この雪の国には、ジャムヤン・キェンツェー・ワンポほど学識が深い者は他にいないと思っていた! しかし、彼のような者がここにいるではないか! この二人は、並んで駆ける純血種の競走馬のようだ!」

 詩を最後まで熱心に聞くと、遂にパトゥルは帯を締めて、お茶を飲むために腰を下ろしたのだった。

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