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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(65)

◎カルマイ・ケンポ・リンチェン・ダルギェーが教えを懇願する

 偉大なテルトンであるチョギュル・リンパはあるとき、弟子のカルマイ・ケンポ・リンチェン・ダルギェーをパトゥル・リンポチェのもとに送って、パトゥル・リンポチェの教えを受けさせた。チョギュル・リンパはケンポに、パトゥルが想像も及ばない程の器量を持った師であり、とりわけ、彼が説くシャーンティデーヴァの入菩提行論の教えを受けることは、計り知れない程の恩恵をもらたすであろうということを伝えた。
 チョギュル・リンパはケンポに、「我が弟子に衣服、食べ物、ダルマをお与えください」と書かれた紹介状をもたせて、パトゥルのもとに送った。

 さて、リンチェン・ダルギェーは偉大な学者であり、チョギュル・リンパのダルマの継承者の一人であり、完全なる出家僧であった。彼は、戒律をすべて純粋に守っていることで有名で、実際に自分でもそれを非常に誇りに思っていた。決して嘘をつかず、一度も肉を食べたり、アルコールに触れたこともないと言われていた。そして、女性に決して触れないという厳しい誓いを立てていた。

 ケンポは僧院の法衣をはおり、托鉢の鉢を背負い、杖を手に持って、パトゥルのもとにやって来た。偉大なるケンポが五体投地をするや否や、パトゥルは突然、「幽霊の王がいる!」と叫んだ。ケンポは動きを止め、パトゥルは立ち上がった。
 ケンポはもう一度試みた。ケンポがパトゥルに向かって礼拝をしようとするたびに、パトゥルは脇にジャンプして回避した。パトゥルは左にジャンプし、そして右に移動した。そしてすべての礼拝を不発に終わらせ、ケンポの礼拝を完全に回避しきったのだった。
 遂に、ケンポはあきらめた。

 翌日、勇気を奮い起こして、ケンポは再びパトゥルのもとへ行き、正式に教えを求めた。
 パトゥルは首を振った。

「ああ、君には何も教えを与えられぬよ!」

 パトゥルは言った。

「君にはダルマを教えることはできない。私は本物の教師ではないからね!」

 ケンポは去っていった。

 翌日、ケンポは戻ってきて、再び懇願し始めた。
 パトゥルはケンポをただただじっと見つめた。それから肩をすくめて、曖昧にこう言った。

「ああ、わかったわかった、どうしてもここにいたいのなら、そうするがよい。だが、どうなるかは分からんぞ。」

 カム地方で最も標高の高い地域の一つであるダチュカはその頃、寒さで凍りついていた。一か月間近く、偉大なるケンポはそこにとどまって待っていたが、パトゥルは彼に教えの言葉を一言も与えなかった。
 最終的に、ケンポ・リンチェン・ダルギェーはパトゥルのところに来て、少し悲しんで言った。

「テルチェン・チョギュル・リンパは、あなたから教えを受け取るようにとわたしを送り出されましたが、あなたが本当にわたしに教えを与えてくださらないのならば、私は去ります。もし教えを与える気持ちがあるのならば、わたしはあなたに強い信を持っているということを知ってください。わたしはサマヤを破っていないですし、間違った見解も持っていません。」

 パトゥルは素っ気なく答えた。

「おお、そうかい。ならば、わかった、わかったよ。明日ここに戻ってきなさい!」

 翌日ケンポは、遂に教えが受けられると思いながらやって来た。パトゥルは両手で、極度に丁寧に、ケンポに僧院の僧衣を一式授けて、こう言った。

「これが……衣だ!」

 ケンポはその僧衣一式を受け取り、頭を下げた。
 パトゥルは言った。

「明日また来なさい。」

 翌日、ケンポは教えを受けに再びやって来た。
 パトゥルは両手で、極度に丁寧に形式張った様子で、「これが……食べ物だ!」と言って、子羊の足の巨大な干し肉をケンポに授けた。
 幾分驚きつつも、ケンポは子羊の足の干し肉を受け取って、頭を下げた。パトゥルはこう言った。

「明日またここに来なさい。」

 翌日、ケンポは再び教えを乞いにやって来た。
 パトゥルは両手で、極度に丁寧に形式張った様子で、「これが……ダルマだ!」と言って、入菩提行論のテキストを授けた。ケンポはテキストを受け取り、頭を下げた。
 そしてパトゥルは言った。

「さて、あなたの先生の希望に従って、私はあなたに衣服と食べ物とダルマを与えたぞ!」

 沈黙が流れた。

「これで終わりだ!」

 パトゥルは言った。

「これで明日、あなたは元いた場所に帰ることができる。」

 ケンポは仰天して、パトゥルの前に平伏した。何度も何度も平伏し、そして「お願いです。どうか教えをお与えください!」と懇願した。
 パトゥルは断固として拒否した。

「チョギュル・リンパからは、衣服、食べ物、ダルマをあなたに与えるように頼まれたのだ! あなたはそれらを得たではないか! もういいだろう!」

 しかしケンポ・リンチェン・ダルギェーはそれでも帰ろうとはしなかった。彼はそこにとどまり、毎日屈せずに教えを懇願し続けたのだった。
 パトゥルはついに折れて、ケンポに広範囲にわたる教えを与え始め、数ヶ月間愛情を込めてケンポの面倒を見、熱心に教えを与えた。

 偉大な学者を “幽霊の王”という侮辱するような名前で呼んで、彼の礼拝を避け、彼に一貫して教えを与えることを拒否したのは、ビックの誓いを厳密に守っていることを広く称賛されていたことから生じていたケンポの隠された虚栄心を炙り出すためのパトゥルの策だったのである。

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