パトゥル・リンポチェの生涯と教え(27)
◎ルントク、後ろ歩きで学ぶ
しばらくの間、ゾクチェン僧院の上方に位置する原生の氷河地帯にある隠遁所で、パトゥルは一日中瞑想をしながら暮らしていた。夕方になるとパトゥルは、クンキェン・ロンチェンパが著した「七つの宝蔵」をルントクに説いていた。夜が更けると、二人は立ち上がり、パトゥルは教えを説き続けながら、歩き始めるのだった。パトゥルは眠気を覚ますために歩いていた。ルントクは、パトゥルがテキストを見られるように、パトゥルが歩いている前方を、テキストをパトゥルの方に向けながら、後ろ向きで歩いた。パトゥルは歩きながら、テキストを読み、それを解説したのだった。
二人は毎晩、このようにして、一人は後ろ歩き、もう一人は前に向かって歩き続け、遂にルントクは、パトゥルから「七つの宝蔵」のすべての教えを授かったのだった。
後年、ルントクはこのように述べている。
「あの頃の人々は、たとえ、腹を満たして快適に座りながら『七つの宝蔵』の教えを聞くという機会に恵まれていたとしても、少しも修行をしなかった! ある者たちは、瞑想の指示を尋ねることさえしなかったのだ!」
ルントクの教学と修行をサポートするために、パトゥルはルントクに、デルゲで書き写された版の、ロンチェンパの「七つの宝蔵」を一式贈った。パトゥルはルントクにこう言った。
「お前は幸運だ。ゾクチェンを修行し、完全に悟ることができる能力を持っているのだからな。」
このようにして、パトゥルはルントクを、内なる悟りに関する霊性の後継者として認めたのだった。
講義が終わるごとに、ルントクは、パトゥルの解説に基づいた注釈を、テキストの本文の行間に赤いインクで慎重に書き足した。
これらのニョシュル・ルントクが注釈を書いた大切なテキストは、カムのパリュル国の中の、ニョシュルの出身地にあるシュグ・シャル僧院に保管された。「至高なる宝典」という膨大な経典集は、始まりから最後まで、手書きの注釈が書かれている――他の巻にも、あちこちに、いくらの注釈書きがあるのである。