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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(24)

◎黒虻への供養

 パトゥルは、慈・悲・喜・捨の四無量心の瞑想を重要視していた。彼は、すべての衆生を、過去生において自分を愛をこめて育ててくれた優しき母であったと見なし、心からの慈悲心を育てて、ありとあらゆる衆生が、幸福と幸福の因を見いだせるようにと願うことの重要性を常々認識していた。

 パトゥルは、チャンマの庵(ヤナギの庵)で暮らしていたとき、夏の午後になると、黒虻が群れとなって飛んでいる森へと出掛けて行った。そこで、着ているものをすべて脱いで、地面に横たわった。すぐに、彼の裸の体全身が真っ黒になった。黒虻に完全に覆われてしまったのだ。パトゥルは何時間もそのようにして、じっと動かず、飢えた虻の群れの為すがままにまかせ、自分の肉を噛ませて、お腹いっぱい自分の血を吸わせてあげたのだった。

 それが終わると、立ち上がって、服を着て、心の弟子であり従者であるニョシュル・ルントクに、「ヤ! ルントク! 帰る時間だ!」と言うのだった。

 翌日、午後になると、パトゥルはまたこう言うのだった。

「ヤ! ルントク! 森へ戻って、また供養をしよう!」

◎パトゥルの慈悲

 あるときパトゥルは弟子のルントクに言った。

「愛しきルントクよ、近頃、『心をダルマに向けてくれる四つの思考』を思索しているときや、輪廻のデメリットを思い起こしているときに、私は六道輪廻の苦しみを熟考することができないのだ。神、阿修羅、人間の三つの善趣の衆生の苦しみについて考えることはできる。しかし、地獄、餓鬼、動物の三悪趣の衆生の苦しみのことを考えると、その苦悩に耐えられなくなる! もう、耐えられなくなってしまうのだよ! 本当に耐えられなくなるのだ!」

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