パトゥル・リンポチェの生涯と教え(102)
◎パトゥルがまた別の遊牧民の一家に騙される
あるとき、若い遊牧民の少女が亡くなり、その父親はパトゥル・リンポチェに、彼女のために祈りを唱え、意識の移し替えの儀式をしていただきたいと考えた。彼は、パトゥルがそのような儀式を行なうのを了承するのは非常に稀なことであると十分にわかっていたが、それを打開する策を見い出そうとしていた。馬に乗り、そしてさらにもう一頭の馬を引き連れて野営地を出ると、彼はパトゥルに会いに向かったのだった。
そのときパトゥルは、ザチュカのアジャ渓谷で暮らしていた。そこは、人殺しの盗賊たちが蔓延する悪名高い場所であり、日が暮れたあとにそこを通ろうとする者は一人としていなかった。彼は非常に慎重に旅の計画を立てた。ちょうど日が暮れかかってくる頃にパトゥルの野営地に到着しようと考え、そのように実行した。このようにして、無事パトゥルに会うことができたのであった。挨拶を交わしたあと、パトゥルは彼にどこに向かっているのかと尋ねた。彼はこう答えた。
「ゾクチェン僧院へ行き、ゾクチェン・リンポチェに娘のために祈りと意識の移し替えの儀式を行なっていただけるように頼もうと思っています。時間がありません。夜通し移動してでも、早くあそこに着かなくては。」
パトゥルは彼に警告した。
「危険すぎます! この辺りを夜に移動するのはおやめなさい! 間違いなく追剥ぎに遭いますよ! ここで一晩過ごし、朝に発つとよいでしょう!」
亡くなった少女の父はこう答えた。
「時間がないのです。娘のためにも、できるだけ早く儀式を行なうことができるよう最善を尽くすつもりです。たとえその途中で盗賊に殺されたとしても! この辺では儀式をやってくれるラマは見つからなそうですし。そう思いませんか?」
パトゥルはそこで突然、優しくこう言った。
「おお、そうかい、そうかい。そういうことだったら、あなたは一晩中移動する必要はありません。私が祈りと儀式を行なって差し上げましょう!」
このようにして、賢い父は望んだ通り、亡くなった娘に相応しい儀式をパトゥルに行なってもらうことができたのだった。