yoga school kailas

パトゥル・リンポチェの生涯と教え(10)

◎パトゥル、自分の修行について自分を叱責する

 パトゥルは、ゾクチェン僧院の上方にある牧草地に、小さな黒いヤクの毛のテントを張って暮らしていた。ある日、近くにいたある人が、パトゥルが独りでこのように言っているのを聞いた。

「今日のお前の修行はひどかった! 今日は飯抜きだ!」

 そう言った後、パトゥルは自分に何も食糧を与えないのであった。またあるときは、自分をピシャリと打って、罰していることもあったそうだ。

 また別の日、彼が自分に対してこのように意見を述べているのが聞かれた。

「うむ、よいだろう。よし、今日は悪くなかった。」

◎パトゥル、特別な伝承を受ける

 パトゥルが洞窟で独りで瞑想に励んでいるとき、彼は、外で誰かが「パトゥル! パトゥル!」と大声で彼の名前を呼んでいるのを聞いた。一体誰だろうかと不思議に思い、外に出てみると、その洞窟の入り口には、彼の規格外のグル、唯一無二のド・キェンツェー・イェーシェー・ドルジェが立っていたのだった。彼はチャン(チベットの酒)を飲んでおり、たった今捕まえて絞め殺した鹿の足を提供してきた。

 パトゥルはその鹿の足を直視し続けることができず、心の中でこう考えた。

「ド・キェンツェーは本当は何がしかの煩悩を持っているのではないだろうか?」

 そのとき、その偉大なヨーギー(ド・キェンツェー)は、パトゥルの顔を平手で滅多打ちにし、怒鳴り散らした。

「ピー・イ・イ! お前はこの洞窟で遊んでいたのか!? まだ二元的な思考にはまっているのか!」

 ド・キェンツェーは、パトゥルに唾を飛ばし、大股で歩いて去って行った。
 ショックを受けたパトゥルは、突然、直接の存在の裸の境地に入り、概念から解放されたありのままの意識を経験したのであった。
 パトゥルは、これは、彼(ド・キェンツェー)がグヒャサマージャ・タントラの伝承を直接的に与えてくださったのだ、と言っていた。

◎巨石を見て思い出すもの

 ゾクチェン僧院の上方にある氷河の荒野(カントー)に、巨大な岩があった。パトゥルはダルマを説くとき、皆から見えやすいように、よくそのてっぺんに座っていた。一度教えを説き始めると、まるでその巨岩のように、彼はそこを動かなかった。雨が降っても、日が照っても、教えをすべて与え終わるまでは、決してその座から立たなかったのだ。

 パトゥルは、そのどっしりとした岩を指さして、弟子たちにこう言った。

「その不動の岩を見るときには、その光景によって、悟りを得ることによって衆生を利するぞ、という不動の熱望を心に思い起こさせるようにしなさい。」

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする