ド・キェンツェー・イェシェー・ドルジェの生涯(3)
生まれて三日後、彼は母の膝から消え、その三日後に再び姿を現したときには、彼女の枕の上に座っていました。後年に彼が書き記したところによると、その間、赤い姿の女性が現れて、彼を清らかなる地へ連れて行ったそうです。水晶のような宮殿では、多くのラマやダーキニーたちが水晶の壺からくんだ澄んだ清らかな水で彼を洗って清め、そして彼に祝福と予言を授けました。それ以来、彼は自分の周りに覚者たちの姿とともに輝く光線や光の輪を常に目にし続けました。また、いつも共に遊んでいる一組の子供たちが自分のそばにいるのを感じました。
ある日、目には見えない子供たちの手を借りて立ち上がると、彼は空の向こうにサンド・ペリ(銅色に輝く山)《Zangdok Palri》、グル・リンポチェの清らかなる地を目にしました。その清らかなる地にはグル・リンポチェや持明者とダーキニーたちの集まりが、豪華な食事の供養の儀式をおこなっていました。これを目にして、彼の心には献身の気持ちが満ちあふれ、目には涙があふれてきました。その瞬間、彼の母が彼の姿を見て、大声で叫びました。「赤ん坊が立ち上がっている!」その声を聞いて彼はその目の前の経験から目覚め、地面に倒れたのでした。その後、彼は少しばかり普通の子どもに戻りました。
両親が遊牧民であったためにド・キェンツェーも幼い頃から様々な幕営地へと移動して暮らしましたが、そのたびに彼は、悲しい顔をして見送る霊的な存在や、喜び騒いで彼の新しい土地への到着を迎える霊的な存在たちの驚くべき姿形を目にしました。彼は常にダルマパーラ(ダルマを守る神)によって守護され、そして清められ、食物を与えられ、祝福されたのでした。
ある日、彼はニャン・ニマ・オーセル(1121-1192)と名乗り、サンギェー・リンパ(1340-1396)の生まれ変わりであるラマ・ソナム・チューデンを探しているというタントラヨーギーを見ました。
その後、彼は両親に、自分をラマ・ソナム・チューデンのもとに連れて行くようにと言い始め、さもなければ自分は死ぬだろうと告げました。しかし、誰一人としてそのラマのことを知っている者はいませんでした。
ドドゥプチェン一世がその近くの場所を訪ねてきていたので、ド・キェンツェーの父は息子から聞いた話を彼に伝え、「あなたはソナム・チューデンなるラマを知っておられますか?」と尋ねました。ドドゥプチェンはしばらく空を見つめてから、両手を胸のところで握って献身の姿勢を取り、こう言いました。
「ええ、私はその人物をよく知っています。彼は私の法友です。とりあえず、あなたの息子さんの顔を見に行きましょう。」
到着し、ドドゥプチェンがその赤ん坊に「私のことをお分かりになられますか?」と尋ねると、まだ一歳を少しばかり超えたド・キェンチェがこう答えました。
「はい。あなたがソナム・チョーデンです。私はあなたのことを知っています。あなたは私を見捨てたのですか?」
ドドゥプチェンはその赤ん坊を腕に抱き上げると、涙を流しながらこう言いました。
「ええ、あなたのおっしゃるとおりです。私にはあなたがそうお感じるになる理由が分かります。しかし、今まであなたを見つけることができなかったのです。これからは私があなたのお世話をいたします。」
後年ド・キェンチェーは、彼がグル・リンポチェの姿をしたドドゥプチェンを見たと書き記しています。ドドゥプチェンは祈りの言葉を唱え、その子に祝福を与えると、両親にこう言いました。
「ソナム・チョーデンとは私の名前ですが、しかしある一人のラマを除いて誰もそのことは知りません。これからあなた方は私の住まいに来てもらいます。そうしないと、あなたの息子さんは生きながらえることができないでしょう。」
ジグメ・リンパの自伝のよると、ドドゥプチェンはジグメ・リンパのもとを去るときに、二人が再び出会えるよう自分の地域に転生してほしいと頼んだのでした。よって、ドドゥプチェンには果たすべき義務があったのです。ド・キェンツェーは彼の師の生まれ変わりでした。
-
前の記事
ド・キェンツェー・イェシェー・ドルジェの生涯(2) -
次の記事
バクティの精髄(4)