チャウラーンギ
ちょうど前節で述べた王子は、両手両足を切り取られ、木の根元に横たわっていました。アチンタは王子にイニシエーションと壺の呼吸法を与え、
「シッディを獲得したら、お前の身体は元通りになる」
と言いました。アチンタはこの教えを与えると、去っていきました。
王子は瞑想し、12年が経過したのち、王のご用達の多くの商人たちが、金・銀・ガラス他の高価な品を豊富にその地にもたらしたので、その地には強盗と盗賊などが発生していました。
夜、王子が自分の木の根元にいると、足音が聞こえました。
「誰だ?」
と尋ねると、商人たちは彼のことを盗賊か強盗だと思い、
「私たちは石炭商人です」
と答えました。
王子は、
「それならそのようであれ!」
と答えました。
商人たちが家に帰ると、金などの高価な品が石炭に変わっていました。彼らは、どうしてこのようなことが起きたのか思案してみました。頭は大変混乱していました。すると、商人たちの中で思慮深い者が言いました。
「夜、道を歩いていたとき、誰かがわたしたちに『誰だ?』と尋ねた。彼は間違いなく、語った言葉をその通りに実現させる者なのだ。彼のところに戻って、本当にそうなのか確かめてみよう。」
商人たちは森に向かい、木の根元に座っている手足を切り取られた男に、自分たちの話をしました。そして、語ったものを実現させる言葉を再び語ってほしいと頼みました。すると王子は、
「わたしが原因ではないと思う。しかし、もしそうならば、あなた方の財宝は何でも、まさしく元通りになれ!」
と言いました。
家に帰ると、彼らの貴重品はまさしく元通りになっていました。彼らは驚き、王子を供養するために、贈り物を持って王子のところへ行き、この話を聞かせました。すると王子は彼らに自分のグルの予言を語り、「わたしの身体よ、元通りになれ」と言うと、そうなりました。
シッディのすべてを得、王子は奇跡的な神変を示しました。しかし教示を重要視するあまり、人々には与えず、代わりに木に教義を示したので、木は不死となり、それはまだ存在しているといわれています。
不死を得たチャウラーンギの話、終わり。
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