クリッティヴァーサ・ラーマーヤナ(2)「ラトナーカラの罪の清算の始まり」
第二話「ラトナーカラの罪の清算の始まり」
クリッティヴァーサは神聖なるアーディ・カーンダを語る――
ラトナーカラはまず最初に父のところへ行き、こう言った。
「俺は人間を殺して財産を奪います。父上はこの悪行の罪を共有してくれますか?」
チヤヴァナはその息子の言葉を聞き、こう答えた。
「お前の悪行の罪を共有するわけがないだろう。
父は息子の悪行の罪を共有せねばならぬなどということは、どの聖典にも書いていない。
おお、愚か者よ。父の罪を息子が共有できないように、息子の罪も父は共有できないのだ。
今日子供であった者が、明日には父親になる――それが生命のサイクルである。
私が私の父の息子であるように、お前は私の息子である。
お前が子供のとき、私は多くの困難、不利な条件に立ち向かい、父親のダルマから眼を離さずに、お前を愛情込めて育ててきた。
それにもかかわらず、私がお前を育てることによって犯した罪は、一つもお前と共有しなかった。――それなのに、よく自分の罪を私と共有したいだなどと言えたものだ。
お前が息子として生まれて青年になった後のあるとき、私はお前の父親でありながらも若さを得た。――それなのに、たとえお前がわれわれに食べ物を与えてくれるとはいえ、どうしてそのようにして犯した罪を私が共有できようか?」
父の本音を聞いてラトナーカラは悲嘆に暮れ、恐れながら母のもとに行き、日々自分が犯している悪行のことを話した。
そして彼は母にこう尋ねた。
「俺の不安を和らげるために、俺の悪行の罪を分け合ってくださいますか?」
非常に興奮しながら、彼の母はこう答えた。
「あなたを生むために、私は十か月も苦しみに耐えました。よって、私に食事を与えるのがあなたの義務です。
それゆえに、あなたの罪は共有できません。」
母の言葉を聞くと、追剥は悲しみに打ちひしがれ、今度は妻のところに行き、こう尋ねた。
「なあ、率直に教えてくれ。お前は俺の罪を共有してくれるか?」
そして妻はこう答えた。
「あなたが私を娶ったときから、私はあなたの伴侶となりました。そのときから、私に食事を与え私を守ることはあなたの義務となったのです。
それゆえに、あなたが積んだ功徳はすべて私と共有しなければなりませんが、私にご飯を食べさせるためにあなたが犯した罪を私と共有するのは、あなたのダルマではありません。」
その妻の言葉を聞くや否や、ラトナーカラは恐怖に襲われてこう考えた。
「この罪の海の中でどうすることができようか。溺れ死ぬぞ。俺はずっと情け容赦なく殺人と略奪を繰り返してきた。俺の運命は一体どうなるのだ?」
彼は鉄のハンマーで自分の頭を殴り、意識を失って地面に倒れた。
そして彼は、暗い心で眼に涙を浮かべ、樹の下で彼を待つ苦行者たちのもとへと向かった。
彼はその苦行者たちに身を投げ出して慈悲を乞い、こう言った。
「親族たち皆に問いかけてみましたが、この宇宙で誰も私の罪を分け合ってくれる人はいませんでした。
どうか私に慈悲をお垂れください。そして、私をこの大量の罪から救う神の叡智を、私にお与えください。」
すると苦行者たちは彼に、河に行って沐浴をするように言った。
これを聞くと、追剥(ラトナーカラ)は河へ向かった。しかし彼を目にするや、その河の水は干上がり、その結果として水の中に生きる生き物たちは死んでしまったのだった。
これを見るや、追剥は良心の呵責に苛まれた。
そしてブラフマーのところへ戻って、「沐浴するための水を見つけられなかった」と言い、さらに、「はじめは十分な水が河を流れていたが、私を見るや、すべてが干上がってしまった」と伝えた。
そこでブラフマーはナーラダに、どうしたらこの追剥は罪から解放されるのだろうかと意見を聞いた。
そしてブラフマーは急に自分のカマンダル(水瓶)から水を取ると、それをラトナーカラにかけ、「彼にマハーマントラを授けよう」と考え、彼の耳元に近づき、ラーマの御名で彼を祝福してこう言った。
「日々罪を犯すことによって、お前の舌は役に立たぬものとなってしまった。お前は絶対にラーマの御名を唱えることはできぬだろう。」
するとその瞬間にブラフマーは、ラトナーカラにラーマの御名を唱えさせる面白い方法を思いついた。
ブラフマーはラトナーカラに、まず最初に「マ」と唱えさせ、その後に「ラー」と唱えさせれば、大罪人でもラーマの御名を唱えられるであろうと思ったのである。
そしてブラフマーはラトナーカラにこう語った。
「私はお前の罪を取り除く方法を思いついた。
”マラー(死)”と唱えなさい。なぜならば、人々は皆死ぬからである。
休むことなく”マラー”と唱えるならば、ラーマ様はお前のハートに宿られるだろう。」
その後すぐに、ブラフマーは樹になっていたしおれたイチジクを指さし、ラトナーカラに向かって「あれを何というか」と尋ねた。
ラトナーカラは大変苦労しながらも、「しおれたイチジクです」と言った。
そこでブラフマーはこう言った。
「休むことなく”マラー、マラー”と唱え続けるならば、お前は追剥として犯した罪から解放されるであろう。」
ブラフマーはラーマの御名を唱えることのメリットを目撃して、驚嘆したのだった。
このアーディ・カーンダは、パンディタ・クリッティヴァーサによって唱えられた。