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クリシュナ物語の要約(20)「クリシュナを探すゴーピーたち」

(20)クリシュナを探すゴーピーたち

 ゴーピーたちの虚栄と自負心によってクリシュナが姿を消してしまったとき、彼女たちはひどく困惑してしまいました。
 そしてクリシュナに会えない悲しみをいやすために、皆でそれぞれがクリシュナのしぐさや話し方をまねて、お互いをクリシュナとみなしつつ、森から森へと、クリシュナを探して歩き回りました。

 しばらくするとゴーピーたちは、森の中でクリシュナの足跡を見つけました。彼女たちは大変喜びましたが、やがてそのクリシュナの足跡が、一人の女性の足跡と交差しているのを見つけて、大変落胆しました。

「まあ、ナンダの御子(クリシュナ)と一緒に並んで歩いていった、この女性はだれなのかしら?
 クリシュナは彼女から礼拝を捧げられて満足して、私たちを置いてその女性だけを連れて行ったのだわ!
 この足跡の女性は、クリシュナを独り占めして、どこか秘密の場所で、ゴーヴィンダの唇を楽しんでいるに違いないわ!
 ああ、ここで彼女の足跡が消えているわ! きっとクリシュナは、彼女の足が草で傷ついたので、ここで彼女を抱き上げたに違いないわ!
 ほら、ここを見て。気高きあのお方は、花を集めるために、愛する彼女をここでおろされたのだわ。そして愛しきあのお方は、ここで恋人のために花を集められたのだわ。
 ああ、ここでは、恋のとりこになったクリシュナが、彼女の髪を整えられたに違いないわ。そしてここに腰をおろされて、彼女の髪を結んだのだわ!」

 ゴーピーたちはこのような妄想と嫉妬心にとりつかれ、苦しんだのです。
 実はクリシュナは、このような妄想や嫉妬、独占欲などの「女性の持つ悪しき心」を世に示すために、わざとゴーピーたちに足跡が見つかるように、その場所で一人の女性と戯れたのでした。

 さて、このときにクリシュナが一人だけ連れ去ったその女性(ラーダー)は、クリシュナの意図を知らずに、こう考えました。
「自分はすべての女性の中で、最も美しいのだわ。だって愛しいクリシュナは、他のゴーピーたちをすべて残して、私と一緒にいることを楽しまれているのだもの!」

 そしてラーダーの傲慢さはどんどん増大していき、森の中のある場所で、彼女は高慢にもクリシュナにこのように言いました。
「ああ、もう歩けないわ! 私を運んで行ってちょうだい!」
  
 これを聞いたクリシュナは、
「じゃあ、僕の肩に乗ってごらん!」
と言ったかと思うと、瞬時にその場から姿を消してしまいました。

 ラーダーは、自分が傲慢に陥り、クリシュナに高慢な言葉を言ってしまったことを後悔し、嘆き悲しみました。
 
 クリシュナの足跡を追ってきたゴーピーたちは、そこで一人嘆き悲しむラーダーを見つけました。そしてラーダーから、自分の悪しき心によってクリシュナが消え去ってしまったことを聞くと、皆、非常に驚いたのでした。

 その後、ラーダーをはじめとするゴーピーたちは、月明かりの下、森のなかでクリシュナを探し続けましたが、やがてあたりが暗くなってしまったので、仕方なく森からヤムナー河の浜辺へと引き返していきました。
 その間、彼女たちは、クリシュナだけに心を没頭させて、クリシュナのことだけを語りながら、クリシュナの様々な行ないをまねしたり、クリシュナの誉れを歌い続けた結果、自分の体や家庭のことを、全く考えなくなったのでした。

つづく

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