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アディヤートマ・ラーマーヤナ(52)「ランカーへの猿の軍の行進」

戦争の巻

第一章 ランカーへの猿の軍の行進

◎ラーマとスグリーヴァとハヌマーンの討議

 ハヌマーンが語ったことにお喜びになり、ラーマはこう仰った。

「ハヌマーンは、神々によってすら、大いなる努力をもってしても達成するのが不可能な使命を果たしたのだ。この世界は、彼が為したことを想像することすらできないであろう。
 誰が百ヨージャナの海を跳び越えられるだろうか?
 誰が悪魔に四方八方を防護されたランカーを壊滅することができようか?
 スグリーヴァの召使いとして、彼は完全に完璧に、自らに課せられた使命を果たしたのである。
 そのようなしもべは今までも、そしてこれからも、この世界には存在しないであろう。
 ハヌマーンがシーターを発見したことによって、彼は私、ラグ族、ラクシュマナ、そして猿の王スグリーヴァの名誉を守ったのだ。
 シーターの捜索と発見は完全に果たされた。さあ、これから先はどうすべきであろうか?
 ハヌマーンがいとも簡単に跳び越えた大海のことについて考えると、私の心は揺れ動くのだ。
 いかにして、サメやワニのような危険な水棲生物に満ちたあの百ヨージャナの海を渡り、敵を滅ぼしてシーターを救出すればよいのだろうか?」

 ラーマのこのような言葉を聞くと、スグリーヴァは彼にこう言った。

「われわれはサメやワニのような危険な水棲生物に満ちたあの海を渡ることができましょう。
 ランカーを破壊し、ラーヴァナを殺しましょう。
 おお、ラグ族の主よ! すべての不安的な思考を捨てたまえ。そのような不安的な思考は、目的を達成する途上において立ち現われるのであります。
 これらの巨大な猿たちは、あなたを喜ばせるために、どんなことでもする覚悟が――必要であれば火に入って死ぬ覚悟さえもできております。
 まずは海を渡る方法と手段を考えましょう。
 ひとたびランカーへと渡ることができれば、われわれはラーヴァナを殺したも同然であります。
 おお、ラグの主よ! 私は三界に、戦の中で弓を携えた御身に刃向うことができるものなど誰も知りません。
 おお、ラーマ様! 至る所に勝利が確実にわれらのものとなることを示す前兆があります。」

 信仰心と勇敢さが表されたスグリーヴァのこれらの言葉を受け入れ、ラーマは、前に立っているハヌマーンにこう仰った。

「われわれは何とかして大海を渡らなければならない。しかしその後に、どうやって進めばよいのだ?
 お前は神々や阿修羅でさえ入るのが困難であるといわれるランカーの特徴を述べてくれた。
 おお、偉大なる猿よ! お前からランカーに侵入するのが困難だと聞いたゆえに、われわれはそれらを乗り越える戦略を考えようではないか。」

 このラーマの言葉を聞くと、ハヌマーンは合掌してお辞儀をし、大変謙虚にこう言った。

「おお、偉大なる御方よ! 私は私が見たようにランカーの特長を述べさせていただきました。
 ランカーの街は天高くそびえ立つトリクータ山の高さに位置しております。
 外観は黄金でできた建物と壁で満ち、純粋な水で満ちた堀に囲まれているのです。
 そして美しき花々の庭、広大な溜め池、貴石でできた柱、そして非常に素晴らしい屋敷で溢れていました。
 そして西門には象隊が、北には騎馬隊と歩兵隊が配置されておりました。
 そして同じように、ランカーの東と西の門にも勇敢なる悪魔たちのおびただしい数の軍隊がおりました。
 ああ、主よ! 街の中心にも同様に、数えきれないほどの象隊、騎馬隊、馬車隊、歩兵隊が、一切の飛び道具に精通した将軍たちと共に配置されているのです。
 ランカーにはそれらの軍隊、そしてそれに加えて一度に百人もの人々を殺戮することができるロケット弾(サットアグニ)で防護されております。
 そのように難攻不落ではありますが、おお、主よ、お聞きください、私がそこで為したことを。
 ラーヴァナの戦力の四分の一は滅びました。街には火がつき、その黄金の塔は粉々になったのです。私はその発砲隊や防衛のための秘密基地を破壊しました。
 そのまさに一瞥により、あなたはランカーを灰と化することができると私は存じております。
 ああ、至高者よ! 四方八方に勇敢なる猿の軍を配置し、ただちに旅立ち、海岸へと向かいましょう。」

◎軍の行進

 このハヌマーンの言葉を聞くと、ラーマはこう仰った。

「おお、スグリーヴァよ! 御身の兵隊たちに行進を命じたまえ。
 勝利を示す吉兆な時はすでに始まった。
 私は今このときに、難攻不落なランカーをそこに住するラーヴァナとその悪魔の一族諸共を滅ぼすために旅立とう。
 そして私は同様にシーターの救出をも成功させるであろう。
 右目が震えている。これは幸運がわれわれを待ち受けていることを意味する。
 さあ、勇ましき猿の軍隊を行進させたまえ。
 将軍たちを、部隊を守るために、後ろ、前、そして左右につかせてくれ。
 私はハヌマーンの肩に乗って前方を進もう。ラクシュマナは私の後ろでアンガダの肩に乗って進みなさい。そして御身スグリーヴァは私と共に行進しておくれ。
 部隊の四方八方に軍の将軍たち――ガヤ、ガヴァヤ、ガヴァークシャ、マインダ、ドウィヴィダ、ナラ、ニール、スシェーナ、そしてジャーンバヴァットのような大いなる破壊の能力のある将軍たちを行進させるのだ。」

 これらの命令を猿の部隊に与えると、全能のラーマは、スグリーヴァとラクシュマナ、そして猿の軍と共に旅立ったのであった。
 変幻自在で、天象アイラーヴァタと等しい力を有する一切の猿の軍隊は、戦いのような動きを示したり、恐ろしい喊声をあげたりしながら、南の海へと行進していった。
 途中ですべての果物と蜂蜜を食い尽くし、ラーヴァナを滅ぼす決意を宣言し、それらの比類のない力を持つ猿の将軍たちは皆、移動していったのだった。
 それらの猿の部隊の中の二人の将軍の肩に乗っておられるラグ族の二人の大将は、まるで輝く星々と共にある太陽と月のようだった。
 すべての空間を埋めるほどの無数の猿の英雄たちは、尻尾を地面に突き刺し、武器として木々を引っこ抜き、風のような速さで山々を越えて行った。
 その途方もなく大きい軍隊は、ラーマに導かれ守られながら、休むことなく昼も夜も大いなる熱意を抱きながら行進していった。
 マラヤ山とサヒャ山の壮大なる森を見ると、彼らは歓喜してそれらの山の領域を通り抜け、期日通りに、波のうなり声が聞こえる海岸へと到着したのだった。
 ラーマはハヌマーンの肩から降りると、スグリーヴァと共に海岸へと向かった。
 彼はこう言った。

「われわれは今、あらゆる水棲生物の住処である壮大な海に到着した。しかし、この海を渡る方法を考え出さない限りは、ここから先へは進めない。
 それについて考えようではないか。それまでの間、兵隊たちには休んでいてもらおう。」

 ラーマのこの言葉を聞くと、スグリーヴァは、将軍たちの守護の下、その海岸に待機するよう兵たちに命じた。
 彼らは皆、巨大な波と巨大な水棲生物に満ち、底知れぬほど深く、空のように広大な恐ろしい海を目の前にして、落胆していた。
 畏怖を奮起させるヴァルナの住居を見て悲しみに満たされ、彼らはこのように話し始めた。

「どうやってこの海を渡り、あのラーヴァナという悪党を倒すというのだろう?」

 そのような思いに悩まされ、彼らは皆ラーマの周りに集まったのだった。

◎ラーマの悲しみの背後にある哲学

 シーターのことを思い出すと、明白な目的のために人間の姿で化身されたラーマは、哀れそうに悲嘆し、シーターの様子について思いを巡らすのだった。
 しかし、悲しみが生起したその状態がラーマの真の本性であると理解する者は、無智なる人々である。
 真の本性においてラーマは、二のない一なる御方、純粋なる意識、永遠なる存在である至高者である。
 無智のしるしであるその悲しみ、そして喜び、恐怖、怒り、貪欲、迷妄、慢心などのような弱さは、純粋意識であられる彼には決して影響を与えないと知ることなく、人々はそれらの無智の一切のしるしが彼に生起すると考える。
 悲しみは「私は身体である」と考える者の性質である。
 身体と自分は同一であるという認識を持たず、自分は純粋意識であるという経験の中に確立されている者の中に、悲しみがどうやって存在できるというのであろうか?
 深い眠りの中でさえ、彼に苦しみや喜びは存在しない。
 苦しみと喜びという相対性がなければ、眠りは(たとえどんなにそれが無明によって覆われていようが)、「純粋なる至福」の一つであると謳われる。
 ブッディ(理性)がなくなれば、純粋意識の中に確立された者に苦しみは存在しない。
 ゆえに、苦しみと一切の相対的な経験は、ただのブッディの虚飾であり、決して真我のものではない。
 ラーマは創造の以前にでさえ存在し、一切を包含し、永遠に光り輝く至高者である。彼は永遠に不滅なる至福であり、どんな変化にも影響を受けることがない。
 この彼の真の本性に無智な人々は、彼がマーヤーの性質を有していると考え、彼が幸福であったり苦しんでいたりすると語るのである。

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