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アディヤートマ・ラーマーヤナ(46)「英雄ハヌマーンの目覚め」

第九章 英雄ハヌマーンの目覚め

◎猿たち、再び話し合う

 その禿鷹が空高く舞い上がったとき、シーターの捜索に専心する猿たちの喜びようは凄まじかった。
 さて、空のように広大で近づき難く、その力強い波が打ち寄せ、クジラなどの危険な水生の生き物で満ちている海を見て、猿たちは次のように話し始めた。

「この大海をどうやって渡るというのか?」

 そして、アンガダがこう言った。

「おお、気高き猿たちよ! 私の言うことを聞きたまえ。御身らは皆、偉大なる強さと勇気と冒険心を授かっているのだ。御身らの中の誰が、この海を渡り、王の命を果たすことができるだろうか?
 その者は、間違いなくわれら全員の命の守護者となろう。ゆえに、これを果たせるほどの力を持つ者は、私の前に名乗り出るよう願いたい。
 その者はラーマ様やスグリーヴァ様と同様、われら猿たちすべての救世主となろうことに疑いはない。」

 太子アンガダはこのように言うと、猿の英雄たちは皆、お互いの顔を見て黙りこくってしまった。
 アンガダは再びこう言った。

「この使命の成就のために、それぞれが己の武勇を示したまえ。その後、誰がこの使命を果たせるのかを決めようではないか。」

 アンガダの言葉を聞くと、猿の英雄たちは次々に、自分が飛躍できる距離を述べていった。猿の大将たちは、十ヨージャナ以上から述べ始めて、前の述べた者よりもさらに十ヨージャナ以上跳ぶことができる者が次に申し出る、というようにして述べ合った。
 その猿の中から、ジャーンバヴァットがこう言った。

「わしは九十ヨージャナ跳ぶことができる。昔、マハーヴィシュヌがヴァーマナとして化身され、一歩で全世界を跨がれたときじゃった。わしは二十一回、彼の御足の周りを回ったのじゃ。しかし、わしは今は老いた。わしの跳躍能力は非常に限られたものになってしまった。」

 そしてアンガダはこう言った。

「私は海を跳び越えて向こう岸に行くことができる。だが、帰ってこれるかどうかは分からない。」

 英雄ジャーンバヴァットはこう言った。

「だが、御身はわれらのリーダーであり、王なのですぞ。たとえ御身に十分な力があろうが、その使命を御身に与えるのは相応しからぬことであると存じます。」

 これに対してアンガダはこう言った。

「そのようなことが現状であるならば 今一度われわれは、ダルバの寝床に横たわって断食して死のう。この使命を果たさずして、誰も生きる希望は持てぬ。」

◎ジャーンバヴァット、ハヌマーンを鼓舞する

 そして再びジャーンバヴァットが取りなしてこう言った。

「おお、息子よ! それでは御身に、この使命をいとも容易く、迅速に成し遂げられる者を示してさしあげよう。」

 そう言うと、彼は遠く離れてたたずんでいたハヌマーンを呼んで、こう言った。

「おお、ハヌマーンよ! この重大なときに、何ゆえに静かに一人たたずんでおられるのか? おお、勇者よ! 今こそ御身の力を示すときですぞ。御身は風神の子であり、彼同等の力を有しておられる。
 ラーマ様の目的を成就するために、御身はその神から生まれた。昔、御身はこの世に生まれたまさにそのとき、朝日を見るや、その太陽を熟した果物だと勘違いして、飛んでいってしまった。五百ヨージャナほど上昇すると、御身は大地に落ちてしまった。御身がそのような御業を為したとき、誰が真に御身の力の程度を計ることができたであろうか? 目覚めよ、ラーマ様からの使命を果たし、われわれを救いたまえ。」

 ジャーンバヴァットのそのような言葉に大いに心奮わせ、ハヌマーンは宇宙を裂くかのような獅子の咆哮を高々に放った。
 それから、彼はヴァーマナのように、山のように身体を巨大化させ、このように宣言した。

「大海を渡り、ランカーを灰と化して参ります。ラーヴァナを一族諸共滅ぼし、ジャナカのご息女シーター様を連れ戻してみせましょう。
 首に綱をくくって左手でラーヴァナを引きずり回し、右手でそこにある山ごとランカー全土を持ち上げてラーマ様の御許に参り、それらをお預けいたしましょう。
 あるいは、高潔なるシーター様の所在地を発見するや、戻ってまいります。」

 ハヌマーンのその言葉を聞くと、ジャーンバヴァットはこう言った。

「さあ、シーター様の居場所を見出した後、彼女が生きていようと死んでいようと、戻ってこなくてはならぬぞ。その後、ラーマ様と共にランカーへ行き、御身の力を示すがよい。
 おお、愛しき者よ! 大海を跳び越える覚悟を決めた御身に幸運あれ。御身に追い風が吹かんことを!」

 偉大なる猿の大将たちに祝福されながら、ハヌマーンは見るものすべてを驚嘆させる姿をとって、マヘーンドラ山の頂上から跳び上がった。
 そこで、山のように大きく、金色の肌をし、桃色で美しい顔をし、長い腕を持ち、蛇の王のように力強き、その偉大なる風神の子ハヌマーンを、多くの人々が見たのだった。

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