「鳥のダルマの素晴らしき花輪」より(15)
続いて小さな赤いライチョウが立ち上がり、目を端に寄せて相手を見る癖でまわりを見渡してから、「ティク、ティクメ」と鳴きました。この鳴き声には「たしかなものはない」という意味がこめられています。
「思想と実践が結びつかない不完全なヨーガ行者に、たしかな教えはありません。ティクメ。
輪廻と解脱はひとつだから、輪廻を抜け出すための教えに、たしかなものはりません。ティクメ。
遠くまで広がっていく噂には、たしかなことは含まれていません。ティクメ。
世間ずれした嘘つきの話に、たしかなことは含まれていません。ティクメ。
おしゃべり好きの噂話には、たしかなことは含まれていません。ティクメ。
忙し屋さんたちのしていることには、たしかなことは含まれていません。ティクメ。
愚か者の会話には、たしかなことは含まれていません。ティクメ。
敵の領土近くの財産には、たしかなものはありません。ティクメ。
ひとたび生まれた者ならば、死の時にたしかなものには出会えません。ティクメ。
いつも人を騙している者の話に、たしかなことは含まれていません。ティクメ。
大麦畑の出来具合には、たしかなことは言えません。ティクメ。
愚か者の心に、たしかなものはありません。ティクメ。
女性に頼り切りの家には、たしかなものはありません。ティクメ。
迷い犬のさまよいには、たしかなものはありません。ティクメ。
夏の空から降る雨に、たしかなものはありません。ティクメ。
御符の裏側には、たしかなことなど貼り付けていません。ティクメ。
腹いっぱいの気持ちよさには、たしかなものはありません。ティクメ。
娼婦のヒモに、たしかなものはおりません。ティクメ。
ガニ股の歩き方には、たしかなところがありません。ティクメ。
生き物たちの友情に、たしかなものはありません。ティクメ」
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