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「解説『スートラ・サムッチャヤ』」第10回(4)

◎如来の本性

 はい。だいぶこれも広がっちゃいましたが、とにかく、われわれの状態、つまりそのカルマの状態、あるいは心の状態――どれだけけがれてるか、あるいはどういう観念を持っているかによって――で、これはね、ヨーガの言葉で言うと、「ウパーディ」――「限定付加条件」って言うんですけども――限定付加条件と言われる、つまりその、真我とか如来にはなんの限定もないと。ね。あるいはよく言われるのは「相」もないって言うね。相もないっていうのは、特徴がない。われわれの言葉で表わすような特徴もないし、限界がない。限定がない。けども受け手側に限定があるので、だからそこに――例えばさ、それは、空【そら】っていうのを考えたらいいよね。空っていうのは、まあ現代ではちょっとまた考え方変わるけども、まあ普通のその純粋な見方をした場合ね――空【そら】には限界がありません。でも洗面器に映った空【そら】っていうのは、洗面器っていう限界がありますよね。「ああ、洗面器に――鏡でもいいですよ――鏡に映ってますね」「空【そら】が映ってますよ」と。でも例えば、二十センチ、十五センチっていう限界の中の空【そら】ですよね。「空【そら】って二十センチかける十五センチぐらいなんですね」と。いや、そんなことないよね(笑)。つまり、これは映ってるものの条件に過ぎない。あるいはその洗面器に、例えばスーパーマンの絵が描いてあったとするよ。「あっ、スーパーマン飛んでる!」と。飛んでないよね(笑)。つまり、スーパーマンの絵っていう、こっち側の、受け手側の条件で、空【そら】にスーパーマンがいるように見えるだけであって、実際には空【そら】には何もいない。空【そら】はただ純粋なだけであって。
 あるいはね、まあもっと言えば、空が青く見えるっていうのはさ、これもその、単純に光の屈折でただそう見えるだけであって。あるいは夕焼けがね、オレンジに見えるっていうのも、光の屈折等の条件によってわれわれはそう見えてるだけであって、実際は空【そら】は透明であると。ただ純粋なだけであるということなんだね。つまりこっち側の条件によって、まるでそれが、ある実体が、ある限定的なものに見えてしまう。じゃあどう見えるんですかと。それが、こっち側の条件によってですよっていうことだね。
 だから、如来というのはどこにも行かないし、あの、なんていうかな、何か「こういう顔ですよ」とかなんかあるわけでもないんだね。ただ絶対なるだけなんです。で、それが、絶対なる純粋なるものが、われわれの条件に応じて現われてきてると。
 で、何度も言うけどさ、それは、われわれの修行というか、心の浄化とか、あるいは高い世界に向かうベクトルによって、まさにつじつま合わせとして現われます。
 つじつま合わせっていうのは――まあこれも分かりやすく言いますよ。分かりやすく言うと、これも何度も言ってる話ですが、如来という存在が、われわれへの愛によって、われわれに常にアプローチしてるんだね。つまり太陽が常に光をわれわれに放ってくれてるように、アプローチしてるんですね。でもわれわれっていうのは本当にもうけがれまくっているので、その光を光として認識できない。でもさっき言ったように、少しずつ少しずつ日々の皆さんの――これはね、皆さんのいろんなパターンがある。例えばカルマが落ちたとか。あるいは、まあ周りに対して愛を向けたとかね。うん。それによって、ちょっとずつそれがこう、けがれが落ちてくると、その光を受け取るパートがちょっとはできてくる。で、そこにパーッと差し込むと。でも差し込んだからといって、ストレートには、それは皆さんは受け取れないんだね。何度も言ってるように。例えばY君の前に、その仏陀の光が差し込んだとしても、なんていうかな、例えばこれくらいの穴が開いてね、仏陀の光が差し込んだって、これくらいの仏陀がさ、バーッって現われて、「よう、Y!」とかはならないんだね(笑)。「よう、Y! お前はちょっとしか穴開いてないから、これくらいの仏陀がやってきた」って感じではないんです。そうではなくて、その穴の種類もしくは穴の透明度に応じた、真理の現われがある。で、それがさっき言った、例えば本に出合うとかね。うん。あるいは、ある閃きがあるとかね。うん。で、それがつじつま合せって言ってるんだね。それは、つまりその、ストレートに現われられないので、この世の原則、この世の常識と言われるものに一応則った形で、それが現われるんだね。
 はい。これがここで言ってる、如来の、まあ本性っていうかな、如来というのはそういうものですよと。如来というのは本来は絶対的なるものであって、あるいはなんの相もないものなんだけども、その受け手側の条件によって、まあいろいろ見えるわけですよっていうことだね。

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