yoga school kailas

「解説『スートラ・サムッチャヤ』」第三回(4)

 はい。そして、「一切の罪過をあまねく焼き尽くす炎のごときものである。」
 これも読んだ通りだね。菩提心を持つことによって、過去に積んだ悪は――まあもちろん、その焼き尽くす段階では、いろんな苦しみは伴うわけだけども、浄化されていきますよと。はい。

 「一切の不善法を尽きさせるが故に、大地のごときものである。」――これも同じですね。

 「一切の教えをあまねく成就させるが故に、如意宝珠のごときものである。」――「如意宝珠」っていうのはインドでよく出てくるたとえで、すべての望みを叶える、奇跡的な宝石ですね。はい。それのように菩提心が一つあれば、一切の教えを成就することができるんだと。はい。

 そして、「一切の決意を成就させるが故に、宝の壺のごときものである。」と。「またそれは、輪廻の中にさまよう衆生を釣り上げる釣り針のごときものである。」と。
 はい。この「釣り針」っていうたとえは、これも二つの意味があります。一つはまず、もちろん周りに対してね。つまり菩提心をその人が持つことによって――まあ面白いたとえだけどね、釣り針のように、自分と縁のある人たちを救いあげると。菩提心を持った人がですよ、こう釣り針を持って魚を釣るように、幸せの世界、あるいは解脱の世界に救いあげると。これが一つの意味。
 で、もう一つの意味は、今度は逆に自分の問題。自分の問題に関していうならば、今度は自分たちがね、魚みたいなもので、つまり菩提心っていう、その釣り針ですね。これに引っかかった状態ね。つまりこれはイメージでいうと、だから引っかからなきゃいけないんです、われわれはね。つまりわれわれは魚としてこう泳いでいて、苦しみの輪廻の世界を泳いでると。で、そこにツーッと菩提心の釣り針が垂れてきたと。ここでね、あの、なんていうかな、迷う。迷うっていうのは――まあそれにもちろん、餌とか付いてるわけだけど――「あ、これ食おうかな。でもこれなんか、釣り上げられちゃうんじゃないかな?」――つまりその、「その先には苦しみが待ってるんじゃないかな?」っていう迷いがある。で、そこで、カルマの悪い魚たちは、いろいろ忠告するわけだね。「あれ食わない方がいいよ」と(笑)。「ひどい目にあうよ」と。でも本人は、なんとなく前生の縁とかで、「あれ食いたいな。うーん、でも食わないほうがいいのかな?」――で、ツツツ……ってこう(笑)、誘うように釣り針が揺れて――イメージで言うとね。さあこれが、さっき言ったような、つまり、本当にもうその魂の行先を左右するようなチャンスであり、ヒントであり、大いなるきっかけなんだね。これを食うか、食わないかって大きな問題がある(笑)。で、それを食った人――つまり、「そうだ! よく分かんないけども、菩薩の道を歩み始めたいな。」あるいはまあ、本当にね、その意味を深く理解して、「よし、わたしは菩薩になるぞ!」って言った人っていうのは、まさにパクッて食ったようなものなんです。「さあ、食いついた」と。で、丘の上では、仏陀がギリギリギリってやってるわけだね(笑)。

(一同笑)

 「お! 来た!」グルグルグル……(笑)。

(一同笑)

 「また一人、偉大なる魂が菩提心に食いついてきた」と。で、バーッて釣り上げられて、その魚はね、釣り上げられる途中は、多分苦しいでしょう。「ああ! やっぱり食わないほうが良かったのかな? なんだこりゃ! うわあ!」って釣り上げられたら仏陀がいて、「おめでとう!」と(笑)。

(一同笑)

「君は間違っていなかったよ」と(笑)。そういうイメージだね(笑)。
 だから自分の問題としては、そういう感じね。うん。まさに縁あるっていうか、菩薩のね、縁のある衆生が、菩提心っていう釣り針をパクッて食った瞬間、その人はもう幸せっていうか、解放は約束されたと。
 で、逆にわれわれは――われわれっていうか、菩薩の道を歩み始めた人は、同じようにね、その釣り針を垂らして、多くの人を救わなきゃいけないわけですね。

 はい。そして、「菩提行のすべてのすぐれた境涯(曼荼羅)は菩提心によって生じ、過去・現在・未来のすべての如来もまた菩提心から生じたのである。」と。
 まあこれは、難しい話じゃなくて、簡単な話で、つまり、どんな偉大な仏陀だって、一番スタートは、最初はまず菩提心がない状態があって、そこから、「よし! 菩提心を起こすぞ! わたしはみんなのために仏陀になるぞ!」っていう思いからスタートしたわけだね。そういう意味で、この菩提心――まあ発菩提心ね――菩提心を発するっていうものは、すべての仏陀の母であって、あるいはその仏陀によって、偉大なこの仏陀の世界がつくられていくわけだから、すべてのそういった、至高なるものを生み出すおおもとの種のようなものなんだ、ということですね。
 はい。じゃあ次もいきましょうかね。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする