「経験」④
◎第三のプロセス――無分別
三番目は、『無分別』との遭遇です。
前行は今まで通り行ない、
主要な修行は、
『投影』『固定』『純化』
という三つの側面を持ちます。
☆投影の修行
大声で激しく「ハ!」と21回唱えながら、
心臓のア字、または心臓にある五色に輝く光の球を、
中央気道を上昇させていき、
頭頂の穴から外に出し、遥か上空へと飛ばします。
この修行によって、自分の体と心が感じられなくなるほど
完全にくつろいで落ち着いたとき、
「投影」は成し遂げられ、
そのとき、二元性の対立的な概念の流れは止められます。
あなたは、どんなに試みても言葉では表わせない領域に留まります。
それは、思考の及ぶ範囲を超えているのです。
☆固定の修行
(眩しくないように)太陽に背を向けて座り、透き通った空を間断なく凝視します。
すると自然に、身体の気の流れがより穏やかになります。
そして深い内面から、どんな概念も超えた『無分別』がこんこんとわきあがり、
空のような広がりのある経験が自然に生じます。
☆純化の修行
空に視線を固定している間、心が輝いていて前進するでもなく引き下がるでもない状態で、
地球、山、石、岩、全ての生物と無生物の世界が、大きく広がった空と一体化するのをイメージします。
このときあなたは、自分の体が存在しないような感覚に至ります。
そして心は、空と不可分な状態にあります。
体と心がそのような状態でくつろいでいるときには、
外側とか内側とか、または中間というような心の動揺はありません。
この段階の瞑想においては、粗雑および微細な主観的思考は、しずまっています。
心を、前進させたり後退させることなく、
心がいるべきところへ落ち着かせなさい。
そうすると、意味と言葉と思考を越えた心は、
『無分別』な、空のような究極の意思として生起します。
これが、過去・現在・未来のすべてのブッダ方の、究極のエッセンスです。
あなたがこの状態に慣れて来ると、次第に次の四つの経験が生じます。
①何であれ心に提示されたものは自由に流れ、粗雑な概念的表現はなくなります。
②昼も夜も、あなたはこのダルマカーヤの『非二元性』から切り離されることはなくなります。
③五つの毒は自ずと穏やかになり、心の流れは優しく穏やかになります。
④全てが空であるかのように感じられるようになります。
あなたがこの第三のプロセスの『無分別』に慣れ親しんでくると、
より広い視野、より高い認識、全体的な感覚と、仏性の力が生まれます。
識別力を伴った適切な行ないをなし、
内面の落ち着きと、より広い視野は、統一されていきます。
それによって、究極的または段階的な悟りに到達し、
自他を利するための最もすぐれた行ないをなすことができます。