「好きなものへの集中とは」
◎好きなものへの集中とは
(C)好きなものに集中するという場合、好きなものは大体執着の対象だと思うんですが、例えば七輪の上に乗ったホルモンとか……(笑)。
それはね、二つの答えがあります。一つの答えは、それは駄目だっていう答えね。つまり心を奪われるようなものは、もちろん駄目だと。ここでいう好きなものって、そういう意味の好きなものじゃなくて、神聖な好きなもの。
もう一つの意味としては、それでもいい場合があります。これは私も何回も経験したけども、執着とか心のわずらいっていうのは、集中力がないから生じるんです。本当にホルモンに集中したら、執着消えます。だからね、いつも言うけどね、「インヴォリューション」です。インヴォリューションっていうのは――これはヴィヴェーカーナンダがそういう言い方してるんだけど、まずエヴォリューションっていうのを考えた場合、エヴォリューションってよく進化とか言われるけど、ヴィヴェーカーナンダがエヴォリューションって言ってるのは、つまり――われわれが、逆に考えるとね、本当に心の安定した聖なる状態があるとするよ。これはサマーディだと。これが雑念が入って集中がなくなると何がはじまるかっていうと、エヴォリューションが始まるんです。つまり展開が始まるっていうんです。いろんなものがばーっと展開される。これは幻影なんだね、全てね。
例えばみなさんよく分かるでしょう、瞑想しててさ、非常にいい瞑想状態になったとして、「ああ歓喜だ」となってたとして、ぽっと何か浮かんだとするよ。例えばホルモンならホルモン、「ホルモン」って浮かんだとする。最初はただ「ホルモン」なんだけど、「ああ、ホルモンのあのにおい」とかね(笑)。まだそれだけなんだけど、「ああ、そういえば今度みんなで食べに行こうとか言ってたな」とかね。「そういえば月曜日、仕事早く終わるかな」とかね(笑)。
(一同笑)
どんどん展開していくんだね。最初は寂静の瞑想の隅っこに、ホルモンが浮かんだだけだったんだけど、いつの間にかホルモンの瞑想になってる(笑)。完全に支配されるんだね。これはだからイメージで言うと、こう展開するんです。これは集中力がないからなんです。私はよく実際にそういう経験があるんだけど、展開したものに対して、逆に集中するんです。ぐっとそのホルモンのイメージに集中すると、ぎゅーっと返っていくんです。ホルモンのイメージを起こしたおおもとに返っていくんです。ぎゅーっと返っていって、心の奥に入っていく。だから本当の集中力があれば、それもOKなんだけど、普通は駄目なんです。負けるんです。集中力が執着に負けるんです、普通は。「うー!」ってやって、「あー、食いてー!」ってこうなっちゃう(笑)。
(一同笑)
じゃなくて、そんなものに負けないで集中すれば――これね、完全に不連続点があるんです。「あー……」じゃなくて、うーっ……ガタンっとくるんです。わーっ……パッて静寂に入るんです。瞑想って。だからそこまでの集中力があれば、ホルモンを使ってもOKだけど、わざわざやる必要ない(笑)。それだったらもっと簡単なものでやったらいいかもしれない。
(C)はい。
でも、ちょっと特殊な方法ではあるけどね、それを利用するっていう方法もあるんだね。利用するっていうのはつまり、ホルモンを食べたいっていう気持ちが出てるっていうことは、こいつを辿れば、心の奥に入っていけるんです。だからわざとそれに対して集中するんです。それを、どこかにいってしまえ、とか、無視する、じゃなくて、わざと集中するんです。で、それに打ち勝つことができれば、集中力が執着に勝てば、逃げていくんだね。そのホルモンのイメージが心の奥に。逃げてくのを放っておいてはいけない。追っかけるんです。ホルモンのイメージが心の奥に返ろうとするのを、追っかけるんです。そうすると心の奥に入れるんです(笑)。ちょっと特殊な方法だけどね。だからわざわざそれをやる必要はないけど、みなさんがもし瞑想中に雑念が湧いてきたら、一つの方法としてはそれは使える。集中力がすごくあれば、成功するかもしれない。
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