yoga school kailas

「器」

第二章 器

 次に、人生の真の意味を悟りたいと思う者は、
 師と三宝に信を持ち、忍耐力があり、この現世を厭逆し、
 そこから解放されたいという願望を持つ者でなければなりません。
 輪廻の世界に飽き飽きし、
 そこからの解脱を強く願わなければなりません。
 この現世に背を向けて、透明で輝く心と完璧な智慧を目指し、
 興奮と散漫さを遠ざけ、
 現世的欲望を持たず、
 常に足ることを知り、
 自然に与えられたものに満足し、
 すべては幻影であると知り、
 常に供養の気持ちを持ち
 師や三宝への堅固な帰依心を持つ者
 そのような人は、最も優れた解脱を得ることでしょう。

 彼は最高の精進をするでしょう。
 そして自分と縁のある、すぐれた師の教えを聞き、
 心を純化し、師の教えについて考え、
 実際にそれを実践します。
 彼は昼夜を問わず、努力し続けます。
 師の指示に忠実に従い、
 些細な事柄に心をそらされることなく
 自己の本性を求め、努力するでしょう。

 声聞、菩薩、そして密教行者の三つの道を守り
 衆生の利益のために、自分自身をコントロールし
 すべての功徳を、自分と衆生の解脱のために回向します。

 初心者は、まず修行者としての基礎作りに励まなければなりません。
 自分自身の心を守らなければなりません。
 興奮と散漫さを遠ざけ
 修行に好ましくない状況を避け
 自分自身の欲望や感情をコントロールします。
 真理への願望と、実際の行動を矛盾させることなく
 真理を深く思索することに、心を向けなければなりません。
 そして、常に生起する危険性のある五つの毒が生じないように
 常に自分の心を注意ぶかく観察し
 もしそれらが生じたならば、まさしくその瞬間に
 それらの毒への対抗策を講じなければなりません。

 身・口・意の行為について常に意識しつつ、誠実に行動し
 正しい自負を持ち
 真理にのっとって生きることで
 彼は自分自身を純化するでしょう。

 彼はまた、賞賛や非難に対して無関心でなければなりません。
 認められることと認められないこと、
 名声と悪評、
 これらはすべて幻、夢、こだまのようなものであるとじっと見つめ
 すべてを無関心に受け入れ
 ただ師と三宝への帰依、そしてそれにつながっている自分の本性のみをよりどころとし
 外的状況に動かされることをやめなければなりません。

 要するに
 人生の真の意味に反することは一切行なわないように
 自分自身をコントロールし
 また、他者を害してはいけません。
 そして自分の感情に屈服することなく
 昼も夜も、教えに誠実であることに専念して日々を過ごす
 これは必須条件です。

 これらの教えを守ることは、この暗黒の時代においては、特に重要です。
 悪しきカルマに満ちた我々が、価値ある人生を達成するために。

 ちょうど、翼が一つしかない鳥は、空を飛ぶことができないように
 智慧と慈悲という二つの翼を育てなければなりません。
 そして智慧という翼が成熟しなければ
 慈悲という翼も成熟することはできません。
 よって、自分自身の智慧を高めることで、衆生への慈悲の力も高め、
 衆生に利益を与えることができるのだと
 考えなければなりません。

 人生は、興奮と散漫さの連続により
 人は必ず死ぬという事実さえ覆い隠されています。
 自分で自分の心をだますことなく
 自己の本性を理解しなければなりません。

 人はいつ死ぬかまったくわからないにも関わらず
 今にも死ぬかも知れないということを真剣に考えている人はほとんどいません。

 したがって、あなたは今日、今、この瞬間から、心を入れ替えなければなりません。
 今日にも死ぬかもしれないということを真剣に考え
 もし今日死ぬならば、私はどうなってしまうのかということを、観察してください。

 もしあなたが、煩悩的な興奮と散漫さによって昼夜を送り、一生をそれに費やすならば
 あなたの来世は保障されず
 人間として生まれ、師や教えに巡り合い、修行ができるというこの貴重なチャンスは無駄になります。
 よって、静かに瞑想して、何が重要であるかを熟考してください。
 今死ぬとしたら、私は来世、どこへ行かなければならなくなるだろうか?
 今の自分のカルマと心の状態で、
 悪趣に落ちることを避けることができるだろうか?
 来世も師と三宝と縁ができるだろうか?
 このようなことを真剣に考え
 一瞬たりとも無駄にすることなく、ただちに努力を開始してください。

 当てにならないこの輪廻は、永久の地獄に続く恐ろしい道であり
 よってここから一刻も早く解放されなければならないのだということを、
 心に刻み込んでください。
 今、この恵まれた生において、あなたが道を誤るならば
 来世においては、あなたはさらに迷い、より真理から遠ざかることでしょう。
 したがって、全精力を傾けて、全力で実践すべき時は
 まさに今なのです。
 
 超えるのがとても難しい、煩悩と自我の海を
 貴重な人間の身体と、師や教えとの縁という船で
 今こそ確実に乗り越えてください。

 心の底からの努力で
 幸福と至福(解脱)を目指してください。
 解脱への道を得た、この絶好の機会を生かし
 全力で心をそこに傾けるなら
 完全な自由へ素早く到達する道が、開かれるでしょう。

 人生は永遠ではなく、刻々と終焉に近づいています。
 未来への期待と恐怖、過去へのとらわれ
 このような激しい心の働きによって、無智な者は人生を無駄にし
 解放への道を、自ら閉ざすのです。
 
 誤った考え、誤った行動に慣れ親しむと
 それはその人の自然な状態となってしまい
 煩悩を修習することも、ごく自然になってしまいます。

 しかしあなたが真の利益のために努力するならば、
 煩悩を離れることが自然になり、
 煩悩はなかなか生起しなくなるでしょう。
 しかしそのためには、自分のカルマを乗り越えるための
 懸命な努力が必要です。

 輪廻の世界には、どこにも幸せはありません。
 この幻影の世界に縛られていることのみじめさについて考えるならば
 それは耐えられないほどの苦痛であることがわかります。
 よって今こそ、輪廻からの解脱の道に入らなければなりません。

 人生の意味を追求する努力を
 心から全力で行なわないならば
 せっかく、貴重な人間の身体と、師や真理との縁を手にしたのに
 すべてが無駄に終わってしまいます。
 したがって、この輪廻への厭離の心を今まで以上に強く持ち、
 決して散漫になることなく
 あなたの持てる力のすべてを、ただ悟りのためにつぎ込んでください。

 このような教えを、あなたが最初に理解したならば
 解脱へ向かう気高き意思という砦は確立され、
 さまざまな達成は、それに続いて自然にやってくるでしょう。
 そして、輪廻からの解脱の道も確立されるでしょう。
 このようにして、あなたの身・口・意の行ないのすべてが、
 人生の真の意味と調和してあるとき 
 あなたは、透明な明智と完璧な智慧を実現するために
 ふさわしい器となるのです。

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