「ヴァジュラサットヴァの瞑想と念誦」

◎ヴァジュラサットヴァの瞑想と念誦

　はい。で、その一番目にまずヴァジュラサットヴァの瞑想がきますが、このヴァジュラサットヴァの瞑想っていうのも、いろんなやり方があります。おおまかには同じなんだけど、細かい伝統でいろいろあります。で、ヴァジュラサットヴァのやり方は、ここで説かれてるのはちょっと複雑です。複雑な観想だね。ですが、まあちょっと読んでいってみましょう。

【本文】
①罪と障害を浄めるためにヴァジュラサットヴァの瞑想と念誦をすること

初めに、三宝に心を任せる帰依の心を、確実に自己の心の連続体に植えつけるべきである。

　そして、次のように考える。

　自分自身が輪廻の海に落ちたように、諸々の衆生も同様にこの苦界に落ちている。そして彼らすべての衆生はかつての自分の母であり、多くの恩を受け、害悪を取り除いてもらった恩人であることを思い、すべての衆生に恩を返そうという心を固く持つ。
　次に、それらの母なる衆生が、幸福でないことと、苦しみにさいなまれている諸々の有様を観想して、それら母なる衆生をどうにかして私が、あらゆる楽に向かわせ、あらゆる苦しみから解放しようという思いを強く持つ。
　次に、その二つの事柄を完全に達成できるのはただ仏陀のみであると見て、彼らのために自らが仏陀となりたいという思いを強く持つ。
そして、衆生を救う仏陀となるためにこのナーローの六ヨーガの道を修習しようという固い誓いを間断なくなすべきである。

　これはまず、この三段階、または四段階の論法ね。

　まず一番最初に、「三宝に心を任せる帰依の心を、確実に自己の心の連続体に植えつけるべきである」と。つまり簡単にいうと、三宝ね――仏陀と、仏陀の教えと、それからその仏陀の教えの実践者というか、そういったものに帰依しますと。そういう心をまず固くしなさいと。

　で、その次に、これは菩薩行あるいは菩提心の、三段階の論法ですね。三段階の論法っていうのはまず、この世のすべての衆生はわたしのかつての母であると。またはかつての恩人であると。そういう観想ね。つまりわたしは何度も生まれ変わってますと。

　その中で毎回毎回同じ人と家族とか同じ人と友達っていうのはありえなくて、毎回違うシチュエーション、違う縁があるから、いろんな人が自分の母だったことがあるし、あるいはいろんな人が自分の恩人だったことがある。その恩を考えると、あらゆるこの世の生き物が自分の恩人であり母だったことがあるんだよ。

　よってそれに対して恩返しをしなきゃいけないんだ――という気持ちをまず強く持ちますと。これが第一段階。

　はい、そして第二段階。第二段階で、さあ、その恩返しをしようと思ってるみんなを見ると、みんな苦しんでますと。ね。この人間界だけを見ても、みんないろんな形で苦しんでいる。それどころか、もっとたくさんの動物界に落ちてる魂がいる。あるいは、もっとたくさんの地獄に落ちてる魂もいる。そういうのを見ると、つまりかつて自分のことをとても愛してくれていろんな恩を与えてくれた魂が今地獄で苦しんでると。あるいは動物になっちゃって苦しんでると。あるいは人間だけどもいろんな形で苦しんでると。これを見ると何とか救わなければいけない、どうにかしてわたしが彼らをその苦しみから救いたいんだ！っていう強い気持ちを持つ。これが第二段階。

　で、第三段階では――しかし今のわたしにそんなことはできないと。例えば地獄で、例えば前生で自分に大変な恩を与えてくれた人が今地獄に落ちてますっていわれたって、地獄に行くことはできない。あるいは人間界でね、この人間の世界で前生の恩人がね、今すごい精神的に病んでいて、あるいは煩悩に支配されて、あるいは肉体的に悪いカルマで苦しんでると。でもわたしにはどうすることもできない。それができるのは、つまりかつての恩人たちを本当の意味で救えるのは、それは仏陀しかいないんだと。仏陀の境地に達した者しかいない。

　よって、先ほどの第一、第二を考えると、つまりすべての衆生は恩人だと。恩返しをしなきゃいけない。で、その恩返しをしなきゃいけない人々が今非常に苦しんでいるから救いたいと。でも救うには仏陀になんなきゃいけない。よって、わたしは仏陀になろうと。これがその菩提心の三段階の論法だね。

　さあ、仏陀になろうと。そして、さらにここではもう一つ付け加えで、そのためにこの――まだ本体に入ってないんだけど、このナーローの六ヨーガね、この道っていうのは非常にスピーディーにわれわれを仏陀に向かわせる道だと。よってわたしは早くみんなを救いたいから、このナーローの六ヨーガの道を修習しようという気持ちをしっかりと堅固に誓いをね、たてなきゃいけないんだというのがここのところだね。