「ラーマクリシュナの福音」の著者Mの短い伝記(3)
3.3度目の訪問
マヘンドラが師を3度目に訪問したのは、次の日曜日、1882年5月5日、午後3時から4時のあいだだった。彼は、この驚嘆すべき人への2度の訪問から深い感銘を受けていた。彼は師のここと、霊性の生活の深い真理を説明なさるまったく簡潔な方法とを、たえず考えていた。いまだかつて、このような人に会ったことがなかったのである。
マヘンドラが、当時まだ19歳の青年だったナレンドラ――師の恩寵により、後にスワミ・ヴィヴェーカナンダとして世界にその名を知られることになる――に初めて会ったのは、この三度目の訪問のときであった。マヘンドラがシュリー・ラーマクリシュナの部屋に着いたとき、師は、世間にいる人びとと付き合う方法について話しおられた。師はナレンドラにこうおっしゃった。
「神はすべての生きもの――善人であれ悪人であれ――の中に宿っておいでになる。」
また、こうもおっしゃった。
「社会に暮らす者は、心の邪悪な人びとから自分を守るために抵抗する様子を見せる必要がある。しかし、自分が害されそうだと心配して、相手を害してはいけない。蛇のようにシューシュー言ってもよいが、毒を注入してはいけないよ。」
そのような教えを説かれたあと、師はマヘンドラにこうお尋ねになった。
「推論について書いた英語の本はあるかね?」
M「はい、ございます。それはロジックと呼ばれております。」
「そこに書いてあることを話しておくれ。」
と師はおっしゃったが、彼の説明をほとんど聞いておられなかった。聞いているうちに忘我の状態にお入りになったのだ。そしてマヘンドラはこう思ったのだった。
「師は、霊性の真理に到達するには推論は無益だとお示しくださったのだろうか?」
同じ日の午後5時ごろ、マヘンドラが師の部屋の北のベランダに戻ってくると、ナレンドラが歌っていた。
‘おお、わが心よ、主ハリを瞑想せよ。けがれなきもの、あくまで純粋な魂を!’
Mは、師以外の人がこんなに美しく歌うのを聞いたことがなかった。
そしてシュリー・ラーマクリシュナを見たとき、彼は驚異の念に打たれた。師がサマーディに入っておられたのだ。神の比類なき美しさのために、外界の意識を完全に忘れ去り、目は釘づけにされ、不動の姿で立っておられたのである。
彼が目撃したサマーディと師の至福の光景は、マヘンドラの心に消しがたい印象を与え、たくさんの思いが湧き上がった。彼は深く感動して家に帰った。ときどき自分の内部に、彼はあの、魂を酔わせる歌のこだまをきいた。